火星の人類学者たちの社会的包摂について : テンプル・グランディンと生存の技法について

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タイトル別名
  • Identifying Social Inclusion of Anthropologists on Mars : Temple Grandin and her Arts of Existence
  • カセイ ノ ジンルイガクシャタチ ノ シャカイテキ ホウセツ ニ ツイテ テンプル グランディン ト セイゾン ノ ギホウ ニ ツイテ

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抄録

著者たちは自閉症者で科学者のテンプル・グランディン(1947年生まれ)のライフコースの検討を通して、非自閉症者が多数派を占める社会への適応過程と自らのエンパワメントをもたらす生存の技法について考えようと思う。最初に、自閉症の診断方法の確立から自閉症スペクトラム障害の概念の確立までについての歴史を述べた後に、神経内科医で秀逸な医学的エッセー作家のオリヴァー・サックス(1933-2015)博士が、「火星の人類学者」を自称するグランディンの研究室への訪問記―それがサックスの同名の書名タイトルになる―を執筆する物語について検討する。火星の人類学者は、あたかも(地球の)異文化の世界に住まう人類学者が自分の共感的体験や思いを後回しにして、異民族の振る舞いを模倣することで、まず自分が持つ異文化に対する違和感を飼い馴らしてゆくという様を表現したもので、自閉症者のグランディンが非自閉症の地球人―この地上の大多数の人たち―の生活に合わせてゆく生存の技法そのものを示唆する。グランディンの手法は特殊なものではなく、我々がしばしば抱く社会での生きづらさを、人はどのように克服してゆくのかという知恵を、非自閉症世界の住人―我々のこと―に授けてくれるのである。

収録刊行物

  • Co*Design

    Co*Design 3 1-12, 2018-03-30

    大阪大学COデザインセンター

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