<研究ノート>中国西部地域における少数民族の生計戦略の動態に関する一考察 : 新疆ウイグル自治区北部カザフ族を中心に

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  • チュウゴク セイブ チイキ ニ オケル ショウスウ ミンゾク ノ セイケイ センリャク ノ ドウタイ ニ カンスル イチ コウサツ : シンキョウウイグル ジチク ホクブ カザフゾク オ チュウシン ニ

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抄録

type:Article

本研究では,新疆ウイグル自治区北部のカザフ族に注目し,彼らがどのように土地利用の流動化と合作経営への転換を経験しているかを,現地調査によって実証的に解明し,それらの生計戦略の問題点を抽出した。カザフ族社会は現在,国家による大規模な開発政策の展開に伴う様々な制度改変の影響を受け,遊牧から定住への変化を経験し,半定住・半遊牧などの多様な生業形態に転換してきた。その過程で,この地域では,大きく二つの変化が起こっている。ひとつは,農業開発に伴う土地利用の流動化であり,もうひとつは,農業と一体化した牧畜業の産業化(耕畜連携)をめざす農牧業合作社の組織化である。前者では,農耕経験を持つ外来者(主に漢族)が大量に流入し,牧畜民(カザフ族)から牧草地を借り受けて農業開発を進めているため,牧畜民は牧草地を外来者に提供し,農業労働者として報酬を受け取るという形で生計を維持するようになっている。後者では,農牧民は,農牧業合作社に組織され,耕畜連携による農畜産物の生産・加工・流動・販売など様々な仕事に従事することによって,経営の集約化・効率化の担い手となっている。上述の生計戦略は農牧業発展が危機に直面することによる必然的な選択である。しかし,これらの生計戦略を規定する要因は政府側に偏よっており,農牧民の要請に合致していないのが実情である。

収録刊行物

  • 公共政策志林

    公共政策志林 6 249-261, 2018-03-24

    法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会

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