プレスリーの声の浸透と, 日本の身体文化におけるその変容 (小特集 Echoes of Elvis --グローバル・アイコンの軌跡)

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タイトル別名
  • Reception and Transmutation of the Presley Voice in Japanese Body Culture (Special Issue: Echoes of Elvis --The Trajectory of a Global Cultural Icon)

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抄録

「キング・オブ・ロックンロール」として君臨する間エルヴィス・プレスリーは, ポップ音楽業界だけでなく, アメリカ史を通して国民国家を分断してきた溝を二重に跳び越える文化英雄だった。南部の貧農の子が目映い世界のスターになったというだけでなく, それを「ヒルビリーの伊達男」に, 即ちサム・フィリップスのいわゆる「真正な黒人のサウンドと黒人の感触をもつ白人」になることをもって達成したのである。どうしてそんなことが可能だったのか。ポップ・ミュージックは, イメージの生産と購入を特徴とする新しい経済の中心部分をなすが, 1950年代後半の時期にエルヴィスの声と身体は, 何百万ものティーンエイジャーの心を動かして都市の黒人文化への渇望をかき立てた。顕著に黒人的な音楽スタイルを身にまとった彼は, これをカントリー音楽において展開してきた熱情的で一途な歌唱とブレンドした。彼が引き起こしたロカビリーの熱狂を日本のポップ市場に引き入れようとする初期の試みは, 社会的・歴史的な事情から成功したとは言えない。しかし, 日本にロックビートが浸透する1960年代後半には, 内向きの歌謡曲に新しいジャンルが登場する。森進一, 青江三奈らの歌唱は, 日本の伝統的な芸能力学を, エルヴィスの3連符の震えを含むR&Bの音楽的イディオムと接合するものであった。後に「演歌」と呼ばれるもののルーツを分析する中で我々は, エルヴィスが与えた文化横断的なインパクトの大きさを改めて目撃するだろう。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 110 287-309, 2017-07-31

    京都大學人文科學研究所

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390572174798176512
  • NII論文ID
    120006466645
  • NII書誌ID
    AN00122934
  • DOI
    10.14989/231130
  • HANDLE
    2433/231130
  • ISSN
    04490274
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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