都市と国家の政治文化 : 社会的凝集性の比較歴史社会学

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タイトル別名
  • トシ ト コッカ ノ セイジ ブンカ シャカイテキ ギョウシュウセイ ノ ヒカク レキシ シャカイガク

抄録

本稿は, 歴史社会学の理論や方法, そしていくつかの理念型を中世都市と近世の複合国家の歴史研究に応用し, 人びとがある一定の領域に結集する諸条件-社会的凝集性-とは何かを検討する. 本稿が考察する中世から近世にかけての都市と国家の領域は, 明確な輪郭をもたずに, その境界内で勢力を保持する. だが, この領域の性格は, 文化にたいする統治権力の関わり方をとおして論理的に解明できるのではないか. 本稿は, 政治文化を, 政治的なものについての態度, 感じ方, 考え方, 評価の仕方を総合する規範体系と広く定義し, 団体の成員が自発的に服従する統治権力の仕掛けに着目する. 第一節は, まずわが国の最近の研究動向を概観し, そこで論じられる「礫岩のような国家」を, 国家形成を問い直すひとつの基軸として検討する. 次に, ヴェーバーの国家の理念型を, 彼のもうひとつの重要な関心である中世の自治都市論に接合させ, 団体の領域性を論じる. 第二節は, 共和的自治が特徴的なイタリア中世都市シエナの施療院と守護聖人の崇敬を扱い, 近世の複合国家の君主政に見出される宗教的な一体性とは別の規範体系として, 世俗的な美徳を検討する. 最後に, 社会的凝集性の一般的性格を, 市民の団体意識と脱宗教化する統治技法の関係から総括する.

収録刊行物

  • 市大社会学

    市大社会学 14 52-65, 2017-03-30

    大阪市立大学社会学研究会

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