福祉と開発の人間的基礎 -森有正のレゾナンス-【後篇】

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  • フクシ ト カイハツ ノ ニンゲンテキ キソ : シンユウセイ ノ レゾナンス(コウヘン)

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本稿の課題は,森有正というわが国では稀有の思想家,哲学者から筆者が聴きとった《内なる響き》  森有正のレゾナンス  を手がかりに,「福祉と開発の人間的基礎」を考究することにある.  ここ【後篇】では「人間が人間になる」という根本命題を,森有正自身が呈示する次の5 つの事象ないし事態をとおして読み解き,われわれ自身の生きる問題として考えた.すなわち,1 つは「《人間》の誕生は終っていない」,2 つは「ギリシャの美  感覚の純粋性」,3 つは「自分を超えている運命にたどり着く」,4 つは「自己が自己に還る一つの姿」,5 つは「人間が内面的に到り着く普遍」がこれである.  そしてそこから引き出された知見や智慧の精華は,一言でいえば,こうである.  私たち人間は,一人ひとり自分で「人間が人間になる」,すなわち《固有-普遍》のいのちの存在にならなければならない,と.  このことを,本稿の主題である「福祉と開発の人間的基礎」に関説すれば,こうなる.  私たち人間は,一人ひとり「《固有-普遍》のいのちの存在になる」こと,そしてそれを促すような「福祉と開発」を志向することが求められている,と.  「福祉と開発の人間的基礎」の核心を衝く,森有正の「人間が人間になる」という根本命題から,福祉と開発が学ぶことは,決して小さくはなかった.

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