The Universe of the Office: Fight Club and Bartlebys

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  • オフィスという宇宙 : 『ファイト・クラブ』とバートルビーたち

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本稿はチャック・パラニューク(Chuck Palahniuk)のデビュー作であり、映画化もされた代表作『ファイト・クラブ』(Fight Club)を、ハーマン・メルヴィル「書写人バートルビー」(Bartleby, the Scrivener)に代表されるオフィス・フィクションとして読む。2001年の同時多発テロを予見していたとも読める本作は、資本主義に対する社会批判として読まれることが多い。会社員である無名の語り手は、満たされない精神を物質で満たすことができず、その反動として破壊衝動を満たすための集団ファイト・クラブを結成し、ついにはテロ集団へと変容させる。このように過激な内容と急激な展開を特徴とする一方、語り手の言動にはオフィスワーカーとしての日常が大きく関係していることはほとんど注目されてこなかった。例えば、彼のオフィスワークの一つはプロジェクターを扱うことであるが、彼の分身であるタイラー・ダーデンも映写技師としてプロジェクターを扱う。あるいは、ファイト・クラブはタイラーの過激思想の影響下にあるが、この集団が組織として発展していくのは語り手が会社員という組織人であることが関係している。そして高層コンドミニアムを爆破してタイラーが設立した会社の事務所に移り住むのも、語り手がオフィスに居場所を求めようとする無意識の表れである。そして、自己に潜むタイラーを抹殺するために死を図った語り手は、天国らしき場所で覚醒し、ペンを片手にデスクに座る神らしき人物と対峙する。すなわち、死後の世界さえも生前のオフィスの延長のように描かれている。このように考えると、オフィスという空間に居続ける語り手は、書写人としての仕事を放棄しつつもオフィスに執拗に居続ける それ以前も郵政省の下級職員というオフィスワーカーであったらしい   バートルビーの末裔であり、本作はオフィス・フィクションの系譜に属していることがわかる。かくして本稿は、アメリカ文学史に潜むバートルビーたちを発見する契機を提示しながら、オフィスという一般的な空間の特異性を考察する。

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