<論説>漢代大型墓の構造

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タイトル別名
  • <Article>The Structure of the Large-Scale Tomb in the Han 漢 Period
  • 漢代大型墓の構造
  • カンダイ オオガタ ボ ノ コウゾウ

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抄録

漢代における墓葬は、被葬者の生前の社会的地位に規制されるものである反面、各階層の人々が等しく具有していた死後の世界に対する基本的な欲求をその中に具現化したものであるとも考えられる。本稿では漢代の墓葬の中から特にその墓室構造を取上げて、皇帝陵の墓室構造を文献・発掘例の両面から探り、その王陵としての歴史的変遷の中に占める位置を考察した。その上で、皇帝陵と劉氏一族も含めたその他の大型墓葬との関係を追求して、漢代における政治的秩序維持の問題を考察した。漢代の大型墓は、戦国伝統の竪穴式木槨墓と皇帝の墓葬としての黄腸題湊を有する横穴式墓葬の系譜を引く各種横穴式墓葬、横穴式の多室磚墓の三群に大別して捉えられ、その関係は大きく三時期に分けて考えられる。すなわち、西漢皇帝陵における黄腸題湊を有する横穴式墓葬 (題湊系横穴式墓葬) の採用と大型墓におけるその下賜と理念的模倣、並びに竪穴式木槨墓の併存、東漢前半期における中・小型墓においての題湊系横穴式墓葬の墓室構造プランの模倣・部分的模倣の流行、東漢後半期における大型多室磚墓群の成立と大型墓における題湊系横穴式墓葬の模倣の衰退がこれである。各時期におけるこれら三群の墓葬の関係は、西漢・東漢を通じての政治的秩序維持の度合を墓葬の面に反映したものと推察することが最も妥当と考えられるのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 62 (6), 850-893, 1979-11-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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