<論説>オリエンス管区総監ルキアノス処刑事件 : ローマ帝国の東西分裂期における官僚の権力基盤

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  • 南雲 泰輔
    京都大学大学院文学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員DC

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>The Execution of Lucianus comes Orientis
  • オリエンス管区総監ルキアノス処刑事件--ローマ帝国の東西分裂期における官僚の権力基盤
  • オリエンス カンク ソウカン ルキアノス ショケイ ジケン ローマ テイコク ノ トウザイ ブンレツキ ニ オケル カンリョウ ノ ケンリョク キバン

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抄録

ローマ帝国がビザンツ帝国へと変貌してゆく過程のなかで、皇帝は「市民のなかの第一人者」(princeps) から超越的な絶対者たる「専制君主」(dominus) へとその性格を変えたが、この皇帝権力の変質は、必然的に皇帝を支える帝国の統治構造すなわち官僚たちの権力基盤の変質をも結果することになる。しかしながら、この変質の過程にはなお明らかでない部分も多い。そこで本稿は、三九五年早春、真夜中のアンティオキア市において発生したオリエンス管区総監ルキアノス処刑事件を取り上げ、この事件のなかで展開される皇帝や官僚たちの相互関係を、政治過程や社会的背景を含む当時の時代状況を踏まえつつ考察することによって、ローマ帝国とビザンツ帝国の挟間に位置する四世紀末において、官僚の権力基盤が、皇帝を頂点とするパトロネジから、各々の官僚の個人的資質へと変化したことを明らかにした。それは、個人主義をその特質の一とするビザンツ世界への変質過程の一端を示すものである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 92 (4), 670-698, 2009-07-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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