中国人学習者への日本語の受身文指導に関する一考察 : 日本語教科書とコーパスの調査を通して

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • A study of Japanese passive sentences Teaching method for Chinese Learners : Through a survey of textbooks and databases
  • チュウゴクジン ガクシュウシャ ヘノ ニホンゴ ノ ウケミブン シドウ ニ カンスル イチコウサツ ニホンゴ キョウカショ ト コーパス ノ チョウサ ヲ トオシテ
  • チュウゴクジン ガクシュウシャ エ ノ ニホンゴ ノ ウケミブン シドウ ニ カンスル イチ コウサツ : ニホンゴ キョウカショ ト コーパス ノ チョウサ オ トオシテ

この論文をさがす

抄録

論文

本研究は、文脈構築の角度から中国人学習者への日本語の受身文指導法をさらに深く議論するための基本材料を提供すること目的とする。具体的に、中国で刊行されている日本語教科書の調査と自然会話コーパスでの受身使用実態の調査を行った。まずは、教科書調査の結果として以下の3点が挙げられる。(1)今回の分析対象である教科書は、すべての文型と用法を、初級後半あたりで1 回の授業で体系的に導入する傾向が強い。どの教科書においても文脈情報が不十分のまま、単文末に出現した受身を例文として提示される傾向がある。(2)解釈方法に関して、能動文との対応性の角度から受身文の解説を行う傾向が見受けられたが、受身文の使用と視点とのかかわりに関する説明は教科書に記載されていない。(3)例文のデザインに関して、書き言葉の例は圧倒的多数であるといえる。さらに、提示例文の割合に関して、単文末に出した受身は圧倒的に多く見られた次は、現日研・職場コーパスを利用して行った受身使用実態の結果となる。(1)受身の出現位置から整理すると、使用率の多い順に、連用修飾節、複文末、単文末、連体修飾節、引用節、疑問節となっているが、全体の傾向として、前田(2011)、李(2018)の調査結果とほぼ一致している。(2)単文レベルを超える受身の使用は圧倒的に多いことが明らかになった。それは、許(2004)、李(2015)などの先行研究で指摘している受身の場面依存性あるいは文脈依存性の現れかもしれない。(3)今回の自然会話データの整理から、受身が「ちゃう」「って」と共起しやすいことが明らかになった。その調査結果の分析に基づいて、文脈構築の方法を視野に入れながら、中国人への受身文指導法に関して、次の提言を試みた。(1)教科書における例文例示には偏りがあると言っても過言ではない。コミュニケーションをとることを学習目標の一つとする場合、使用実態に即した例文提示が必要となるかもしれない。(2)解決の仕方に関して、日本語教育の角度から受身の使用動機(日本語話者)に関する知識と研究報告、学習者の母語(本論文の場合は中国語)との比較対照研究の成果を積極的に現場に取り入れるべきではないかと考えている。(3)文脈構築の方法を議論していくためには、受身と共起しやすい表現に関する情報、受身と類似する表現とのつながりを中級以降学習者に示すべきではないかと考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ