戦後ドイツの大衆文化における"heile Welt"の表象と言説 : Ludwig Ganghoferの小説と映画を事例として

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タイトル別名
  • センゴ ドイツ ノ タイシュウ ブンカ ニ オケル"heile Welt"ノ ヒョウショウ ト ゲンセツ : Ludwig Ganghofer ノ ショウセツ ト エイガ オ ジレイ ト シテ
  • Representations and Discourses on "heile Welt"in German Popular Culture after World War II : Reflections from a Case Study of Ludwig Ganghofer's Romance and Films

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抄録

Departmental Bulletin Paper

ドイツ語の“heile Welt”(「無傷の世界」)は、「ユートピア」という意味で肯定的に用いられると同時に、通俗性を批判するクリシェとなっている。  その“heile Welt”を描く代表格としてLudwig Ganghofer(1855-1920)がいる。彼は、彼の描く「郷土」「高地」「農村」のイメージから、ドイツ・ナショナリズムの体現者とされ、こういったイデオロギー批判的言説は、いまなお学術界に根強くある。  一方ジャーナリズムのGanghofer像は、ナチス時代から戦後を通じた彼の「郷土映画」と関連している。1950年に出版された詩集から広まった“heile Welt”は、戦後のドイツ的アイデンティティの再構築と関わった「郷土映画」における表象そのものであった。  しかし1960年代になり、「郷土映画」などの復古的な1950年代の文化は批判にさらされ、それとともにGanghofer が描く“heile Welt”も欺瞞的な「キッチュ」とされていくようになった。  このように“heile Welt”とは、ドイツの歴史的、文化的背景があって、初めて理解可能な言い回しなのである。

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