カナダの先住民族中等後教育政策における先住民族大学

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抄録

本稿の目的は、「先住民族大学」の制度的枠組みと実態を、カナダ連邦政府の施策との関わりから明らかにすることにある。現在、連邦政府が先住民族大学を直接の助成対象としている施策は、2013年度に設置された「中等後教育パートナーシップ事業」である。これ以前には、1989年から2013年まで「インディアン学コース支援事業」が設置されていた。本稿は、インディアン学コース支援事業から中等後教育パートナーシップ始業への移行過程を跡付けることをとおして、先住民族大学にとって中等後教育パートナーシップ事業がどのような制度的特質を有するのかを考察した。その結果、1)インディアン学コース支援事業には、中等後教育における先住民族自治の仕組みが存在したこと、2)中等後教育パートナーシップ事業は、連邦政府の「経済行動計画」の一環として策定されたこと、3)中等後教育パートナーシップ事業は、先住民族大学の支援を目的とするものではないこと、4)インディアン学コース支援事業から中等後教育パートナーシップ事業への移行の過程で、先住民族の教育自治に対する破壊が進行したことを明らかにした。以上を総じて、連邦政府の中等後教育制度は、先住民族大学の存立基盤を揺るがすものであるとの結論を得た。

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