<特集論文 : 証言・告白・愁訴 --医療と司法における語りの現場から>ナラティヴの亀裂、主体の揺れ --精神分析を忘れぬために

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タイトル別名
  • Fissures du narratif, vacillations du sujet --Pour ne pas laisser oublier la psychanalyse

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抄録

精神分析がめざすのは、「ナラティヴ」を構築することではない。反対に、ひとつの物語が隙なく語られれば語られるほど、精神分析家はますますそれに用心する。そのような語りはfadenscheinig、すなわち「見え透いている」とフロイトは述べた。ジャック・ラカンが繰りかえし強調したように、治療のなかでわれわれに作業させるもの、いや、より単純に、(それじたいが)作業するもの、それはパロール(話すこと、話された言葉)にほかならない。ラカンによれば、治療においては「パロールがすべての力〔権力、pouvoirs〕を、すなわち治療の特別な力を握る」。なぜなら、無意識はパロールを通るからだ。といっても、その道筋は無数にあるわけではない。無意識が、いや無意識の「一端」がパロールのなかに顕れるとき、そこにはひび割れや歪みが生じ、その結果、パロールは形が崩れ、壊され、ひどく理解しづらくなって、言い間違いや意味の揺れ(équivoque)として感知されるだろう。 無意識の読解は、こうした微細なひずみに注意を留めることからはじまる。これらのひずみは、無意識がシニフィアンの連なりをくぐったことの痕跡なのだから。

収録刊行物

  • コンタクト・ゾーン

    コンタクト・ゾーン 11 (2019), 290-303, 2019-08-31

    京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050001338480646272
  • NII論文ID
    120006719368
  • NII書誌ID
    AA12260795
  • ISSN
    21885974
  • HANDLE
    2433/243984
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    departmental bulletin paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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