ギリシア古典文学におけるセイレーンたちの魅惑

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  • The Allure of the Sirens in Greek Classical Literature

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抄録

セイレーンの魅惑は様々な仕方で表現されてきた。セイレーンたちを描く古 代の壺絵から現代の絵画にいたる代表的な作品にも、彼女たちの魅惑に異なる 強調点をおいて描かれてきたことをたどることができる。ギリシア古典文学の 中でホメーロスの『オデュッセイア』においては、セイレーンたちの博大な知 識に基づく歌の内容に強調点がおかれる。これは主人公オデュッセウスが知識 を求める英雄であることを反映する。プラトンの『国家』においては、セイ レーンたちは天体の軌道上で、運命の女神たちとともに、現在・過去・未来を 妙なるハーモーニーで歌い続けている。『国家』において、人間の魂がその構 成部分間の調和を求めるべきであるとされるため、セイレーンたちの歌は人間 の魂の目指すべき理想のあり方を示している。アポローニオスの『アルゴナウ ティカ』においては、セイレーンたちの歌の内容は示されず、純粋な歌声の美 しさが強調される。これにより、この歌声の危険を即座に察して竪琴を強く鳴 らしてアルゴー号の乗組員たちが誘惑されることを防いだオルフェウスの賢い 判断が印象づけられる。

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