企業経営とバリュエーション : 企業価値創造の羅針盤

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  • Management and Valuation: A Compass for Value Creation

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抄録

・ 企業価値向上の重要性については経営者と投資家の間ですでにコンセンサスが成立しているように見受けられるが、企業価値創造軸の方向性については未だ理解に混乱が見られる。特に、企業価値評価の根底をなすDCFバリュエーションについては、必ずしも本質的でない細部のテクニックの議論の氾濫により、かえって価値創造の評価軸としての本質が見えにくくなっている感がある。企業価値向上のために真に重要なことは、DCF価値評価のフレームワークが、価値創造の方向性を示す羅針盤としての役割を果たすことである。・ 企業価値の最も本質的なコンセプトであるDCF価値を正しく理解することは、すなわち価値創造軸の方向性を正しく理解することである。本稿では、企業価値向上の本質として、特に「プロフィッタブル・グロース」、すなわち、投下資本利益率と成長の両立が重要であることを明らかにするとともに、しばしば過度なテクニカリティーで企業価値の本質的理解を曇らせる資本コストと残存価値について、一度徹底的にテクニカルな分析を加えることにより、企業価値創造におけるプロフィッタブル・グロースの優位性を確認することを目的とする。・ DCF企業価値の構造を簡潔・明瞭な形で示すバリュードライバー式が教えるように、企業価値向上のためには高いROICと成長性の両立が必要であり、資本コストを下回る投資により成長しても、かえって企業価値を毀損してしまう。もちろん、ROICはどこまでも上げることはできないので、高いROICを保ちながら成長投資を続けていくことが肝要である。・ ROICを高めることと成長することは、そのままでは二律背反の関係にあるが、このジレンマを脱してROICと成長性を両立させるためには、生産関数の上方シフト、すなわちイノベーションが必要である。ここでイノベーションとは、生産の効率化、新しいマーケティング手法、運転資本圧縮による資本効率の改善、人事制度改革による労働生産性アップなど、ROICを改善し、新しい有利な(=ROIC>WACCの)投資機会を見いだして実行するあらゆる活動を包含している。すなわち、企業価値向上とは絶え間ないイノベーションの連続を意味するのであり、DCF価値はその有効な評価基準である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050006065609421184
  • NII論文ID
    120006809303
  • NII書誌ID
    AA1285312X
  • HANDLE
    10086/31007
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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