農山村における新規居住者の地域人材としての「二面性」―長野県飯田市の地域住民組織を事例とした活用可能性―

書誌事項

タイトル別名
  • Duality of New Immigrants as Human Resource to Revitalize Rural Communities: A Case Study of Local Community Organizations in Iida City of Nagano Prefecture
  • ノウサンソン ニ オケル シンキ キョジュウシャ ノ チイキ ジンザイ ト シテ ノ 「 ニメンセイ 」 : ナガノケン イイダシ ノ チイキ ジュウミン ソシキ オ ジレイ ト シタ カツヨウ カノウセイ

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抄録

本稿の目的は,長野県飯田市の地域住民組織を事例に,農山村における新規居住者の「二面性」に着目しながら,新規居住者の地域人材としての特徴を踏まえた活用可能性について検討することである。検討の結果,以下の4点が明らかになった。 第一に,事例対象地域では新たな地域住民組織(まちづくり委員会)が新規居住者に対する統一的・組織的な取組やルール化を進めつつある。そのことが,新規居住者の受け入れや,移住後の近隣関係の構築を後押ししている。 第二に,この中で重要な役割を果たしているのが,飯田市が新たな地域住民組織に配置した地域担当職員であった。地域担当職員は,市の事業を活用しながら,地域社会における潜在的な地域課題を顕在化し,既存の地域住民と新規居住者の間での意思疎通を促す役割を担っている。 第三に,新規居住者は意識的あるいは無意識的に二面性を使い分け,地域社会と柔軟にかかわることで,結果として,地域社会の維持や再生に貢献している。新規居住者による地域関与のあり方は,自主裁量の程度に応じて,「従来踏襲型」,「部分裁量型」,「新規開発型」の3タイプに分類された。 第四に,新規居住者の地域関与のあり方は,地域住民組織によって異なっている。新規居住者の意欲や能力は,新たな地域住民組織においてより強く発揮されていた。 以上の事例は,農山村の地域社会再編に向け,新規居住者の意欲や能力を活用するためには,既存の集落とは異なる組織的基盤や運営方法等が必要であることを示唆している。

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