ロシアの穀物生産増加の要因と今後の課題-小麦を中心として-

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タイトル別名
  • Factors and Concerns of Rising Grain Production in Russia –A Focus on Wheat–
  • ロシア ノ コクモツ セイサン ゾウカ ノ ヨウイン ト コンゴ ノ カダイ : コムギ オ チュウシン ト シテ

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抄録

かつてのソ連は,穀物輸入国として世界の穀物需給に大きな影響を及ぼしたが,2000年代に入り,ロシアは新興穀物輸出国として世界の穀物市場に再登場した。その背景には,畜産の縮小に伴う飼料穀物消費の減少とともに,1990年代に縮小した穀物生産が2000年代に小麦を中心として回復・増加したことがあった。本研究においては,後者の点に着目し,その要因と今後の課題の解明を試みた結果,次のことが明らかとなった。 1.2000年代におけるロシアの小麦生産増加の主たる原因は小麦単収の増加である。冬小麦の主産地であり,この時期のロシアの小麦生産量増加の半分を担った北カフカス経済地区と,春小麦の主産地である西シベリア経済地区について,小麦単収増加要因の計量的な分析を行った結果,前者においては無機肥料に代表される生産財の投入回復,後者においては天候,特に降水量が主な要因と推測される。 2.2000年代における無機肥料投入の回復は,無機肥料の穀物に対する相対価格の速いペースでの上昇が続く中で進行した。この一見矛盾した現象については,過少状態まで落ち込んだ無機肥料の投入量を最適水準に近づけようとする農業生産者の行動と,利子助成融資等の政策的支援が相まって実現したもの,と解釈することが可能である。 3.生産財の価格上昇は続いており,補助金抜きでは穀物生産者の収益性が低下している。無機肥料をはじめとする生産財の投入回復による単収増加というロシアの穀物生産発展メカニズムは,遠からず限界に達する可能性があり,穀物生産・輸出の更なる拡大のためには,穀物生産の技術的な改善とその普及が課題と考えられる。

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