アメリカEITCのノンコンプライアンス問題に対する改善策の一考察 : NTAの提言を中心に

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  • アメリカ EITC ノ ノンコンプライアンス モンダイ ニ タイスル カイゼンサク ノ イチ コウサツ : NTA ノ テイゲン オ チュウシン ニ

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抄録

近年わが国では経済不況等に伴いワーキングプアの増加による貧困問題が深刻化している。この問題に対して税制は何ができるのだろうか。その効果的な方法の一つとして、給付付き税額控除(Refundable Tax Credit)の導入が世界的に広がっている。わが国においても2007年に政府税制調査会でその導入の検討が明記されて以降、検討事項として取り上げられており、今後も低所得者支援対策、消費税の逆進性対策等の観点から、その制度化は社会保障政策や租税政策上の重要なテーマとなろう。このテーマの議論のうち、この制度の母国であり、導入後40年以上続くアメリカの勤労所得税額控除(Earned Income Tax Credit:EITC)制度の現状と課題、その改善策を検討することは、わが国でこの制度の法的意義や立法政策を検討する際に有意義であろう。しかし、この制度は様々な問題がある。その中で特に問題となっているのが過誤・不正受給問題というノンコンプライアンス問題であり、現在も深刻な問題となっている。この問題に対してIRS や連邦行政機関は様々な対応策を施してきたが、現在でも改善はみられない。ただし、議会はEITCを所得税制上の低所得者に対する最大の給付プログラムとして政策的意義があるものと評価しており、制度自体は廃止せず、この問題に対し真摯に対策をし続けている。なぜ議会や連邦行政機関は、こうした問題をもつEITCを廃止することなく改善しようとしているのだろうか。本稿はこのような問題意識の基に、EITCのノンコンプライアンス問題の実態とその対応および課題を整理したうえで、この問題に対して連邦行政機関はEITCをどのように改善しようとしているのかについて、連邦行政機関の最近の提言を材料に検討するものである。第1章ではEITCのノンコンプライアンス問題の実態とこの問題に対するこれまでの連邦行政機関の対応を整理する。第2章ではこうした連邦行政機関の創設目的と業務概要を確認する。第3章では今後この問題を改善するために、連邦行政機関がどのように分析し、提言しているのかを探る。そして最後に、給付付き税額控除は、母国アメリカが最大のノンコンプライアンス問題を抱えながらも、長く納税者のための大切な制度として評価していることを踏まえ、わが国においても、所得再分配に大きく寄与するものではないけれども、真に困っている者を少しでも助ける1つの大切な制度として、その導入を重要なものとしてとらえ、立法措置が確実に成されるべきことを主張する。

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