祭式歌詠と思想 --最初のウパニシャッドはどのように生まれたのか--

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タイトル別名
  • A Philosophy of Ritual Chants : How was the Earliest Upanisad born?
  • サイシキカエイ ト シソウ : サイショ ノ ウパニシャッド ワ ドノ ヨウ ニ ウマレタ ノ カ

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抄録

ウパニシャッドは, 古代インドの宗教儀礼文献であるヴェーダの中に現れた一群の哲学書である。その最古のものと考えられるのが, 本稿で取り上げる『ジャイミニーヤ・ウパニシャッド・ブラーフマナ』(Jaiminīya-Upanisad-Brāhmana [JUB])である。ヴェーダ祭式の歌詠部門(サーマ・ヴェーダ)に所属するジャイミニーヤ派の文献として, 祭式歌詠(サーマン)に関する哲学的な思弁を主な内容としている。JUBは, 先行するブラーフマナ文献のように個々の祭式や歌詠を具体的に記述することはほとんどなく, 祭式や歌詠をめぐって, あるいはそれらを離れて, 再生説を含むさまざまな哲学的思弁を展開している。同じくサーマ・ヴェーダ所属のカウトゥマ・ラーナーヤニーヤ派の『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』と, テキストと内容において近い関係にある。ジャイミニイヤ派内ではウパニシャッドとして扱われているが, ヴェーダの学派伝統の外にあってウパニシャッドを聖典として奉じる後世のヴェーダーンタ学派からは, 『ケーナ・ウパニシャッド』の部分(JUB 4.10.1–4 [4.18–21])を除いてウパニシャッドとは見なされなかった。この文献がヴェーダの文献成立史の中で最初のウパニシャッドとしてどのように生まれてきたか, その誕生の全体像を描くことが本稿の目的である。そのために, 以下の論点について順に考察していく。1. この文献は何を中心テーマとしているのか。2. それ以前の文献ではその中心テーマは扱われていたのか, いなかったのか。3. この文献がそれを中心テーマとする背景はなにか。4. この文献はその中心テーマからどのような思想を展開したのか。5. この文献を作り出したのがなぜこの学派(ジャイミニーヤ派)であったのか。6. この文献を最初のウパニシャッドと見なしうる根拠は何か。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 115 51-105, 2020-06-30

    京都大學人文科學研究所

参考文献 (89)*注記

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