『金光明最勝王経』平安初期点における助辞の訓法の再検討

書誌事項

タイトル別名
  • Reassessing Glossing for Auxiliary Letters with "Golden-Light-Sutra (金光明最勝王経 : Jinguangming zuishengwang jing)" in Early Middle Japanese
  • 『 キン コウミョウ サイショウオウケイ 』 ヘイアン ショキテン ニ オケル ジョジ ノ クンホウ ノ サイケントウ

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抄録

稿者は柳原(2020)で,西大寺本『金光明最勝王経』平安初期点における「之」の読まれ方を整理した。そして,代名詞「これ」として読む場合には「之」自体に訓点を記し,「の」「が」などの助詞として読む際には「之」を不読とすることを述べた。本稿ではさらに「者」「而」「於」について同様の調査を行い,これらの字に自立語を含む訓があてがわれる場合には当該字に施点し,助詞としてのみ解される場合には不読とする傾向が共通して見られることを指摘する。 先に挙げた諸漢字に記された読みを整理すると,柳原(2020)での調査結果と同様に,漢字自体に読みを記すのは「もの」(者),「ひと」(者),「(しか)も」(而),「(おい)て」(於),「(うへ)に」(於)などの自立語由来の和訓で読む場合に限られ,「いは」「は」「ば」(者),「て」「てか」「に」「にして」(而),「に」「にして」「を」(於)などの助詞類は当該字に記さず,前後の句・節に読み添える傾向が体系として確認出来る。また,定型的な表現・構文と認めてよい訓法として,「N(人)の,V(状態・行為)い(主格副助詞)は〔者〕」,会話・韻文の引用前の「而して」,「Nの於(うへ)に」,などが指摘出来る。 上記のような訓点の記し方を,同時代の他資料についての先行の論と比較すると,概ね同様の傾向をもちながら,細かい点で本資料独特の規則があることがわかる。人を指す場合に「者」は「ひと」と読むが,「~者無し」とそのような人物が存在しないことを述べる際には「もの」と読む,「而」を引用句の前でのみ,漢籍を読む際の特徴的な訓法である「しかして」と読む,などである。これらの特徴がなぜ本資料に見られるのか,今後の研究が待たれる。

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