大学同窓会ネットワークの分析 : 会合参加者間の紐帯の強さと話題提供者の関係性に注目して

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  • Analysis of the university alumni association network: Focusing on the relation between the strength of ties among meeting participants and topic providers

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抄録

大学同窓会とは、大学関係者が大学や他関係者との関係を形成し、維持する場である。特に大学の卒業生は、大学同窓会への参加を通して、大学や大学時代の友人との関係を維持し、個人のプライベートを充実させるための情報交換を行っている。こうした場は、時に大学卒業生のビジネスチャンスを生み出すことさえある。 こうした背景から、大学同窓会は今や社会的に重要な存在であると認識されている。その一方で、従来の研究では、社会的価値を持つ大学同窓会の特徴を定量的に検討したものはほとんど見当たらない。大学同窓会における参加者間の関係構造や相互作用そのものを定量的に検討することが外部の研究者にとって困難だったからである。 本研究は、大学同窓会における参加者間の関係構造(ネットワーク)に着目し、大学同窓会の特徴を定量的に解明することを目的とした。具体的には、大学同窓会誌を活用して、大学同窓会会合における話題提供者を特定し、話題提供者を中心とした参加者間の紐帯の強さを明らかにすることを目的とした。 調査対象は、早稲田大学のある特定の学年の同窓会として開催された1957年12月~1967年8月の約10年間の会合(96回)とした。早稲田大学の同窓会は、一般でも入手可能な同窓会誌を発行している。そして本研究で調査対象とした学年の同窓会は、ネットワーク分析を可能とする長期にわたる欠損のほぼないデータを収集することができたものである。 分析は、次の手順で行った。まず、同窓会誌に掲載された会合記録の開催日時と参加者情報をもとに、各会合において、全ての参加者間の紐帯の強さを定量的に算出し、紐帯の強さの分布を観察した。次に、会合記録に記載された情報をもとに各会合の話題提供者を特定し、各提供者と他の参加者との紐帯の強さを定量的に算出し、その会合の参加者間の平均的な紐帯の強さと比較した。 これらの分析の結果、次の2点が明らかになった。第1に、各会合において、ほとんどの参加者間の紐帯の強さは、弱いものであった。第2に、各会合の話題提供者と他の参加者との紐帯の強さは、各会合における参加者間の平均的な紐帯の強さよりも弱いことが示された。 これらの結果は、大学同窓会の会合が全体として弱い紐帯の参加者らで構成されており、特に会合における話題提供者は参加者間の中でも極めて弱い紐帯をもつことを示すものであった。

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