書誌事項
- タイトル別名
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- An Essential Problem of Philosophical Debate about Free Will: Exploring Pereboomʼs Hard Incompatibilism
抄録
本論文ではペレブームの「ハードな非両立論」を手掛かりとして,現代自由意志論の問題点を指摘する。現代分析哲学の自由意志論では,「人間は道徳的責任に必要な自由意志を持つか否か」という問題が,もっぱら両立論-非両立論という対立図式において論じられてきた。両立論は「道徳的責任に十分な自由意志は決定論的世界と両立可能である」と主張する一方,非両立論は「道徳的責任に必要な自由意志は決定論的世界と両立しない」と主張する。そうした中ペレブームは,非両立論的自由意志を前提しつつ,「世界が決定論的であれ非決定論的であれ,人間は道徳的責任に必要な自由意志を持たない」とする「ハードな非両立論」を展開している。彼によれば,人間が道徳的責任を負うためには「行為者因果」,すなわち「行為者が(出来事に還元されない実体として)原初的に行為をはじめる能力」が要求されるが,経験科学の知見に照らしたとき,人間がこうした能力を持つとは考え難い。したがって,人間は道徳的責任に必要な自由意志を持たないと考えられる。非両立論的自由意志を前提するこの立場は両立論への反論を含むものであり,その論証は manipulation argument を通じてなされる。この論証においては,行為者が神経科学者に決定論的な仕方で操作されている事例に始まり,そこから徐々に通常の決定論的事例へと近づいていくような順番で,主要な両立論的帰責条件の充足された4つの事例が提示される。ペレブームはこれらの事例を通じ,我々の直観によれば両立論的帰責条件は不十分であること,および決定論的世界において行為者は道徳的責任を負わないことを主張する。しかし実際のところ,両立論者は尚も直観によってこの論証を退けることができるため,彼が両立論の論駁に成功しているとは言い難い。そして,この論証の問題点は自由意志論の方法論それ自体の問題点,つまり直観に依拠して自由意志を定義することで問題に答えようとすることの限界を暗示しているように思われる。
収録刊行物
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- 研究論集
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研究論集 20 1-14, 2021-03-31
北海道大学大学院文学院
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390572174777856640
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- NII論文ID
- 120007000839
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- HANDLE
- 2115/80778
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- ISSN
- 24352799
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可