絵のなかを歩くディドロ:「サロン評」の風景画記述と「歩行」のテーマ系

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  • Promenades in the Landscape Paintings: Narration and Description in Diderot’s Salons

抄録

フランス啓蒙主義時代の哲学者ドゥニ・ディドロは、その絵画批評のなかでたびたび、「絵画のなかに入り込み、歩き回る、あるいは旅をするという体裁で描写する」ことを行なっている。それは、読者の想像力と趣味(goût)を通して、情景を再構成せしめるための修辞法であった。本論文では、ディドロによる「サロン評」のうち、とりわけ風景画の記述における「絵の中に入り込」み、「絵の中を歩く」描写に着目し、分析と考察を行う。これを、18世紀のテクストと絵画経験における「散歩」や「歩行」というテーマ系の中に位置づけることが、ここでの目的である。  まず、ディドロ「サロン評」の風景画記述の総体を踏まえて、特徴的と思われる部分を抽出する。次に、「歩行」をめぐる同時代の特徴的なテクストとの比較を行う。エクフラシス(視覚芸術の言葉による描写)という修辞学的伝統をはみ出して、「テクスト内空間の想像的な歩行」を行うディドロの絵画批評がその特徴的な一例をなすような、18世紀の思想的基盤を明らかにするのが、本論文の目的にして意義である。

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