外国人材の受け入れと共生の施策についての考察 ―大分県内の「総合戦略」における「多文化共生」への言及と相互参照の分析から―

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  • Reasoning in local policies on the hosting of foreign workers: Insights from the analysis of references to tabunka kyosei in Oita’s local policies and their cross-references

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抄録

本稿は、「地方創生」と「多文化共生」という2つの政策課題が、地方政策レベルでどのように融合されているのかを検討し、外国人材受け入れに関連した地方の施策が持つ論理を考察する。分析に用いるのは①2019年に国の「まちひとしごと創生本部」が策定した「総合戦略」、②国の施策を受けて2020年に大分県と大分県内の17の市町の自治体が策定した施策の公式文書、そして③大分県が作成した「大分県外国人材の受入れ・共生のための対応策」である(②の文書は「総合戦略」、「人口ビジョン」「まちひとしごと創生人口ビジョン」等様々なタイトルが付けられているが、本稿では総称して「総合戦略」と呼ぶ)。本稿は、県内の各自治体が施策の中で言及する「多文化共生」の意味付けのパターンを抽出し、外国人への認識が地方の施策レベルで複数存在し、各自治体の「総合戦略」を補完する手段として言及される傾向があることに注目する。さらに「多文化共生」が「総合戦略」の補完となる傾向ついて分析を発展させるために、M.アーチャー(1996)の文化変容の分析モデルを援用して大分県の「地域包括ケアシステムの構築」施策を具体的に検討する。分析から上記の施策が各市町村の「地域共生社会」の実現を枠づける施策であるだけではなく、システム構築のための外国人介護人材の受け入れは人材獲得競争を伴い、「共生」と「競争」という矛盾した論理を内包することを指摘する。考察から、人材不足から再生産労働の担い手として外国人を受け入れる政策の下で、住民、労働者としての外国人を捉えなおす上での課題を本稿は論じる。

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