アリエッティの帰郷 : スタジオジブリの『借りぐらしのアリエッティ』と二つの英語吹き替え版

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  • アリエッティ ノ キキョウ : スタジオ ジブリ ノ 『 カリグラシ ノ アリエッティ 』 ト フタツ ノ エイゴ フキカエ バン

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抄録

スタジオジブリがアニメーション化した『借りぐらしのアリエッティ』(2010)は、メアリー・ノートンのイギリス児童文学の古典The Borrowers (1952)を翻案した作品である。『ハウルの動く城』 (2004)や『思い出のマーニー』(2014)を含め、ジブリ映画の伝統に位置づけられる作品は、イギリス児童文学を脚色したり、その影響を受けたりしている。ジブリは、物語の舞台を日本へ移し、アニメーション化に際し、環境の違いや文化の背景の違いを反映した多くの変更を加えている。ジブリ作品の英語吹き替え版の大半はディズニー/ピクサーが制作し、アメリカ人声優を起用しているが、珍しいことに、『借りぐらしのアリエッティ』では2種類の英語吹き替え版が制作された。一つは、ディズニーによるThe Secret World of Arrietty (2012)、もう一つは、イギリス人役者を主に起用した、イギリスの配給会社スタジオ・カナルによるArrietty (2011)である。これら二つの吹き替え版では、脚本、性格描写、それぞれの国固有の事物・風物として焦点を当てる箇所などが違う。そしてそれは、ジブリの日本語脚本とも著しく異なっている。本稿では、こうした点に着目し、日本語版と二つの英語吹き替え版を比較対照し(また、ノートンの原作を適宜参照し)、文化を跨いだノートンの物語の広がりを探る。変更点の多くは、日本、アメリカ、イギリスの文化的な違いに関わること、言語や物質的世界の向こうへ広がる問題、物語の慣例や(特にディズニーの場合には)登場人物や家族関係に対する姿勢の違いが関係することについて考察する。その際、「国民性」といったありきたりの結論にならないよう留意しつつ、関連する要因の数やその複雑さにも配慮する。

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