カルシウムチャネル研究の新たなる展開  TRPチャネルを中心としたシグナル複合体形成と細胞の増殖・死の制御

  • 西田 基宏
    岡崎国立共同研究機構 統合バイオサイエンスセンター 細胞生理
  • 原 雄二
    岡崎国立共同研究機構 統合バイオサイエンスセンター 細胞生理
  • 井上 隆司
    九州大学大学院医学研究院生体情報薬理学
  • 森 泰生
    岡崎国立共同研究機構 統合バイオサイエンスセンター 細胞生理

書誌事項

タイトル別名
  • TRP channels: formation of signal complex and regulation of cellular functions.
  • TRPチャネルを中心としたシグナル複合体形成と細胞の増殖・死の制御
  • TRP チャネル オ チュウシン ト シタ シグナル フクゴウタイ ケイセイ ト サイボウ ノ ゾウショク シ ノ セイギョ

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抄録

Ca2+はセカンドメッセンジャーとして,細胞の刺激応答にきわめて重要な役割を果たしている.通常,細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)は低く(≤ 100 nM)維持されているが,いったん刺激が加わると細胞外からのCa2+流入等を介して[Ca2+]iが上昇し,様々な酵素活性,転写活性が制御される.イノシトール代謝回転と連関した受容体の活性化を介して機能する受容体活性化カチオンチャネル(receptor-activated cation channel: RACC)は,ホルモンや増殖因子によって惹起されるCa2+流入を担う最も重要な経路の一つである.TRP(transient receptor potential)は,RACCの分子的実体として注目されていたが,最近では浸透圧,温度,酸化還元状態の変化など様々な外的要因にも応答し活性化されることもわかってきた.また,遺伝子欠損細胞などを用いた解析から,TRPチャネルは他の生体分子と機能的なシグナル複合体を形成し,自身のチャネル活性やCa2+流入によって惹起されるシグナル伝達を効率よく制御しており,増殖·分化や生存·死といった細胞応答を制御することが明らかになってきた.TRPは様々な病気の原因遺伝子としても考えられており,遺伝子改変動物や特異的な阻害薬開発を含めた今後の解析が期待される.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 121 (4), 223-232, 2003

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (49)*注記

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