上部脳幹とくに中脳障害の神経耳科学的診断

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抄録

従来の脳幹における神経学的検査は,運動系•知覚系および脳神経の検索が中心で,眼運動系の検索が診断上重要な役割を果す脳幹背側部はややもすれば"silent"とされてきた.<br>しかし乍ら,その中でも中脳には,水平注視運動•垂直注視運動に関与する皮質下中間中枢,さらには輻輳運動や瞳孔調節の中枢がある.したがつて,この部分に障害がひき起されると,そのきわめて初期にも,各種の異常眼運動症状として,鋭敏かつ線細に反映されてくるため,この所見を詳細に分析することにより病巣局在診断上有力な手懸りを与えてくれることが少なくない.しかもそれは,脳室造影や脳血管撮影など,形態学的諸検査によつてはなんらの異常がみとめられない初期においても明らかなことが稀れではない.<br>上記の理由から,異常眼球運動検査が,中脳領域の障害においてどのよ3な鑑別診断上の役b1を果すかについて考察するのがこの研究の目的である.<br>症例ならびに検索方法<br>われわれが最近経験した症例のうち,病理解剖や手術によつて病巣局在とその性状を確認することができたものを中心とする38例である.その内訳は中脳腫瘍6,第3脳室後部腫瘍4,松果体腫瘍5,血管性障害7,結核腫1,脳幹脳炎3,抗痙蟹剤中毒2,パーキンソソ症候10である.<br>検査は従来から一般におこなわれている神経学的諸検査をはじめ,坂田らの提唱する自発性異常眼球運動の検査,Iidaや上田らの視標追跡運動検査,鈴本•小松崎らの視運動性眼振検査,脳室造影法,各種の脳Btu管撮影法などである.<br>結果その結果みとめられた癌状はつぎのよ5になる.<br>水平性自発眼振.注視不全麻痺性水平性眼振.電光眼運動.緊張性注視樫攣.緊張性輻躾痙攣.輻榛眼振.陥役腹振.輻輳麻痺.上眼瞼向き垂直性自発眼振.上方注視麻痺(Parinaud徴候).方向交代性上向ないし方向固定性頭位眼振.垂直ないし斜行性頭位変換眼振.視標追跡運動(eye-trackingmovement)の障G.視運動性眼振の解発搾制(水平,上眼瞼向き).<br>これら諸症状の成圏について考察すると共に,鰻球運嚇機能と深い関係にある中脳障害の診断にあたっては,異常眼運動痙状を詳緬かつ正確に観察分析することが不可欠であることを強調した.

収録刊行物

  • 日本耳鼻咽喉科学会会報

    日本耳鼻咽喉科学会会報 74(10), 1417-1434, 1971

    一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    130000804786
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00191551
  • 本文言語コード
    JPN
  • ISSN
    0030-6622
  • NDL 記事登録ID
    8384408
  • NDL 雑誌分類
    ZS43(科学技術--医学--耳鼻咽喉科学)
  • NDL 請求記号
    Z19-250
  • データ提供元
    NDL  J-STAGE 
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