尿酸/尿素窒素比を指標とするヒト尿斑証明法の検討

書誌事項

タイトル別名
  • A STUDY ON IDENTIFICATION OF HUMAN URINARY STAINS BY THE URIC ACID/UREA NITROGEN QUOTIENT
  • 尿酸/尿素窒素比を指標とするヒト尿斑証明法の検討(2)試料の素材の差異および採取部位の差異による影響と実際例への応用
  • ニョウサン/ニョウソ チッソヒ オ シヒョウ ト スル ヒト ニョウ ハン ショウメイホウ ノ ケントウ(2)シリョウ ノ ソザイ ノ サイ オヨビ サイシュ ブイ ノ サイ ニ ヨル エイキョウ ト ジッサイレイ エ ノ オウヨウ
  • II. EFFECT OF SAMPLE LOCATION AND VARIOUS TYPES OF MATERIALS ON THE QUOTIENT ALONG WITH APPLICATION OF THE QUOTIENT TO PRACTICAL URINARY STAINS
  • II.試料の素材の差異および採取部位の差異による影響と実際例への応用

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抄録

プリン代謝の相違に基づき, 我々は尿酸 (UA) と尿素窒素 (UN) を同時に測定し, 両者の比の値を指標とするヒト尿斑証明法を開発した.この方法は特異性は高いが, 濾紙斑痕の辺縁部ではUAが低値を示すことが報告されている.また, 従来の尿斑証明法は我々のものを含め, いずれも濾紙斑痕について有用性が検討されているだけであり, 実際の尿斑を形成する素材を用いて有用性を検討している報告はみられない.本研究では実際の尿斑を形成する6種類の素材を用いて素材の違いと試料採取部位の違いによるUA/UN比への影響を詳細に検討するとともに法医鑑識現場の実際例の試料に我々の方法を応用し, その有用性を検討した.まず, 尿斑の抽出時間と抽出温度を検討したところ, 室温で60分の抽出が最適であった.次に, 室温で60分という抽出方法を6種類の素材に適用し, UAとUNの回収率の差を調べたところ, 6種類の素材いずれも易溶性のUNのほうが難溶性のUAより回収率が1-3%程度良かったが, わずかな差であった.また, いずれの素材においてもUA, UNともに80%以上の回収率を示し, 室温で60分の抽出は濾紙以外の綿, 麻, 絹, ナイロンおよびポリエステルに応用可能と考えられた.尿斑の試料採取部位の違いによるUA/UN比への影響を検討したところ, 濾紙, 綿, 麻, 絹の尿斑においては斑痕の辺縁部でUAが低値を示し, UA/UN比も動物の尿斑と同様の低値を示した.一方, 斑痕の中心部, 辺縁部と中心部の中央では前記4種類の素材においてはUA/UN比が原尿の比より高い値を示した.他方, ナイロン, ポリエステルにおいては斑痕の辺縁部ではUA, UNともに中心部や中央部より, やや低値を示したものの, UA/UN比は3つの部分で原尿にほぼ近い値を示した.綿, 麻, 絹, ナイロンおよびポリエステルの尿斑におけるUAとUNの分布性に関する結果は他に報告の見られない新知見である.最後に, 法医鑑識現場の実際例の尿斑に我々の方法を応用したところ, 実際例においても実験例と同様の特徴があり, 実際に役立つことが示唆された.以上のようにUA/UN比を指標とする我々のヒト尿斑証明法は濾紙斑痕だけでなく, 綿, 麻, 絹, ナイロン, ポリエステルの斑痕でも有用であり, さらに, 法医鑑識の実際例の分析にも有用であることが証明された.ただし, 素材の違いや分析試料の採取部位を考慮に入れる必要があることが示唆された.

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