身体障害を随伴しない精神遅滞児の歩行予測に関する研究

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  • PREDICTION OF AMBULATION IN MENTALLY RETARDED CHILDREN WITHOUT PHYSICAL IMPAIRMENT

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抄録

本研究は, 精神遅滞児を対象に, 発達指数, 姿勢反射, 運動能力, 筋緊張, 癩癇などに着目した13歳時点での歩行の有無と歩行獲得年齢の予測方法の開発を目的に行った.対象は東京都心身障害者福祉センターにおいて, 著者らが直接面接できた精神遅滞児のうち, 初回面接時の診療録に基づき (1) 1991年3月31日を基準日として13歳0カ月以上であること, (2) 初回面接時の年齢が18カ月以上でかつその時点ては歩行不能なこと, (3) 知能障害以外に特別な身体障害を随伴しないこと, の条件を満たす77例 (男43例, 女34例) である.調査項目のうち, 歩行に関する項目を除き, 発達指数, 姿勢反射, 運動能力, 筋緊張, 癲癇などの資料は本センター所蔵の診療録から得た.満13歳時点の歩行の有無と歩行の獲得年齢は, 養育者を対象に行った電話による聞き取り調査で把握した.満13歳時点での歩行は77例中33例 (42.9%) が可能で, その歩行獲得年齢の平均は88.0カ月, 標準偏差34.0力刀, 範囲36~156カ月であった.解析方法として, 前記調査項目と満13歳時点の歩行の有無との関連性は, 最適なクロス表が自動的に選択されるプログラムCATDAP-02を用いて検討した.また歩行可能な症例を対象に, 前記調査項日と歩行獲得年齢との関連性を林の数量化I類で検討した.この結果, 精神遅滞児の13歳時点の歩行の有無は初回面接時の発達指数と姿勢反射に着目するなら, 発達指数が23以上の群は側方の立位平衡反応の有無にかかわらず25例全例が歩行を獲得し, 発達指数が22以下の群では側方の立位平衡反応が陽性の症例は5例全例が歩行を獲得し, 陰性の症例は47例中3例が歩行可能となっていた.このことから, 発達指数23以上の症例, および発達指数22以下で側方の立位平衡反応が陽性の症例は歩行が獲得でき, 発達指数22以下で側方の立位平衡反応が陰性の症例は歩行が獲得できないとするなら, 身体障害を随伴しない精神遅滞児の満13歳時点の歩行の有無は96.1%の的中率で予測できることが示された, また前記予測方法で歩行可能と仮定され, 実際に歩行の獲得していた30例を対象に, 歩行の獲得月齢に関する予測方法を検討した結果, 初回面接時の発達指数と姿勢反射の組合せによる予測度が最も高く, 実測値と予測値の重相関係数は0.815となっていた.以上のことは, 身体障害を随伴しない精神遅滞児の歩行が発達指数と姿勢反射の2つの要因で精度よく予測できることを示している.

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