東京都下A区における老人医療費特に入院医療費の分析

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  • ANALYSES OF MEDICAL CARE EXPENDITURE, PARTICULARLY CHARGES FOR AGED INPATIENTS IN A PARTICULAR AREA IN TOKYO

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抄録

老人医療費の高騰が, わが国のみならず世界的にも問題となっているにもかかわらず, 案外この増高要因に関する調査研究は乏しい.わが国においては, 昭和48年から老人医療費の無料化, 昭和58年から一部有料化を実施するなど, 行政的にはこの問題と取組んできているが, いまだその増高の詳細な要因分析の業績は少ないといえる.そこで本論文においては, 東京都下A区における昭和63年7月1カ月分の老人医療費請求明細書の調査を実施し, 特に入院医療費の増高要因の分析検討を行った.分析方法として, 特に, 受療医療機関の所在地をA区内と区外に分けた上で, 区内外別の老人医療費の差異に焦点を当てて検討した結果, 一件当り金額の区内外差が認められ高医療費の要因として明らかとなったのは, 主に次のとおりであった. (1) 年齢階級別では.70歳以上75歳未満, 75歳以上80歳未満, 80歳以上85歳未満の3つの年齢階級. (2) ICDによる疾患別では, 「III内分泌, 栄養および代謝疾患ならびに免疫障害」, 「VI神経系および感覚器の疾患」, 「VII循環系の疾患」, 「IX消化系の疾患」, XVI症状, 徴候および診断名不明確の状態」の5つの疾患. (3) 診療行為別では, 注射, 処置, 検査, 投薬, 画像診断の5つの診療行為であった.これらの結果は, 老人医療費研究が少ないなかにあって今後の老人医療費研究に充分に資するものであると考える.また, これらはA区の老人医療費分析として受療医療機関の区内外比較を行ってはじめて明らかにできたものである.したがって, この区内外別比較は, 市町村の老人医療費の構造的な解析手法として, 今後の老人医療費の分析方法に示唆を与えるものであると考える.

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