ラット卵管粘膜上皮の機能的・形態的研究

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書誌事項

タイトル別名
  • A FUNCTIONAL AND MORPHOLOGICAL STUDY OF THE EPITHELIUM OF THE RAT FALLOPIAN TUBE
  • —CILIUM MOVEMENT AND SCANNING ELECTRON MICROSCOPIC STUDIES OF THE SEXUAL CYCLE, PREGNANCY, POSTPARTUM AND CASTRATION—
  • ―性周期, 妊娠, 出産後, 去勢における線毛運動と走査型電顕所見について―

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抄録

(目的と方法) 妊娠成立に関与する卵管粘膜の機能と形態を究明する目的で, ラット卵管の線毛運動数と走査型電子顕微鏡 (Scanning electron microscope: SEM) 所見を指標として性周期, 妊娠, 出産後, 去勢後の変化および性ステロイドホルモンの影響を検討した.線毛運動数は倒立顕微鏡, 位相差顕微鏡, プリァンプ, 記録器を組合せた装置で測定し, 形態変化は明石DS-130型-SEMで観察した. (結果と考察) 1) 性周期における線毛運動数は発情前期, 後期, 間期に多く, 発情期に少ないが有意差はない.性周期を通じて線毛細胞の形に変化はない.分泌細胞の性周期変化は著明で, 発情後期には膨隆し分泌活動が活発である.血中E2のpeakは発情前期に, P4のpeakは発情前期と後期にあって, 発情後期の分泌細胞の活動はE2, P4によることが窺われた.2) 妊娠1日 (交尾後24時間) の線毛運動数は発情期に比べて有意に多いが, 翌日から減少し, 受精卵が子宮腔に達するといわれる3日には最少となり, 4日から増加に転じ, 以後, 妊娠末期まで線毛運動数はよく保たれる.妊娠中, 線毛細胞の形は変わらない.分泌細胞は妊娠2日には著明に膨隆し, 線毛運動の減少と相まって, 受精卵の輸送, 発育, 栄養環境維持など調節的役割を果していることが推察された.妊娠中期の分泌細胞は分泌旺盛といえるが, 20日 (妊娠末期) には殻物状に隆起し, 表面の微絨毛は一部脱落して長時間のestrogen, progesterone作用による粘膜消耗像であった.出産後1日の線毛は剥脱, 短縮が著明で運動数は測定できず, 分泌細胞も球状不正で表層剥離し, 著しい荒廃像を示すが, 出産後5日には線毛細胞はよく再生して運動数も正常であり, 分泌細胞も再生し微絨毛も密で, 比較的早期に卵管粘膜は修復されることが示唆された.3) 去勢後3週間を経た線毛細胞は短く動きが悪い.分泌細胞は剥離・粗像が著明で微絨毛は消失する.これにE2を投与すると線毛細胞は再生するが動きは悪い.分泌細胞はよく再生する.P4を投与すると一部脱線毛があり, 分泌細胞は隆起するものの表層脱落があって消耗像に似る.E2・P4投与例の微絨毛は短いが, 分泌細胞は隆起し, 妊娠中・後期の像に似る.以上の結果より, 分泌細胞の性周期変化はE2, P4の消長と一致すること, 交尾後の線毛運動の増減と分泌細胞の活動は卵輸送に調節的役割を果すこと, 妊娠末期は長期間のestrogen, progesterone作用の結果と思われる粘膜消耗像となり, 出産直後は著しく荒廃するが, 数日後の粘膜上皮はestrogenの影響を思わせるほど修復されていることが判明した.

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