6学会合同シンポジウム4  大腸がんに対する新規樹状細胞ワクチン(OPA-DC)の臨床試験—免疫学的効果と臨床効果

  • 考藤 達哉
    国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター
  • 榊原 充
    地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 肝胆膵内科
  • 竹原 徹郎
    大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学

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抄録

 樹状細胞(DC)を用いた癌ワクチン療法は消化器癌でも効果が期待されているが,既報の臨床効果は充分でない.これはDCの誘導法が検証されておらず,その抗腫瘍活性が低いことが一因である.そこで我々は遊走能・NK活性能・抗原特異的CTL誘導能に優れた新規DC(OPA-DC)を開発し,有効性と安全性の評価を目的とする大腸癌に対するOPA-DCワクチンの臨床試験を行った.<br> 【方法】CEA陽性かつHLA-A2402陽性Stage-IV大腸癌患者10例を対象とした.単球をIL4/GMCSF存在下で3日間培養した後,OK432,PGE1,IFNαで刺激してOPA-DCを得た.HLA-A24拘束性CEAペプチドを抗原として添加した.これを計4回鼠径部リンパ節近傍に皮下注射し,臨床効果と免疫学的効果を評価した.<br> 【結果】10例中2例は原疾患悪化で脱落したが,投与完遂8例では重度の有害事象は認められなかった.8例中6例でNK細胞の頻度上昇を認めた.またNK細胞傷害活性の上昇を認めた2例でCEA抑制効果が得られた.うち1例でRECIST基準でのSDが得られ,同症例ではCEA特異的CTL頻度が上昇した.しかし誘導されたCTLは,大半がセントラルメモリー細胞(Tcm)であった.有効例では開始前の転移巣が他に比して小さかった.<br> 【結論】OPA-DCは安全に投与可能である.NK細胞刺激能が高く,CEA抑制や腫瘍抑制効果に寄与したと考えられる.一方,誘導されたCTLはエフェクター作用の低いTcmであり,これが充分な臨床効果が得られない一因と考えられた.更に臨床効果を高めるためには,早い段階での投与や免疫抑制因子の制御などの工夫が必要と考えられた.<br>

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