コバルト(III)錯体の新一般合成法

書誌事項

タイトル別名
  • A New General Synthesis of Cobalt(III) Complexes

抄録

微量のCo2+イオンを含む水溶液に,炭酸水素塩の共存下で過酸化水素を加えると溶液は緑色に発色する。この呈色液を合成規模の濃度で得ることができた著者らは,まず生成錯体をトリカルボナトコバルト(III)酸カリウム三水和物K3[Co(CO3)3]・3H2Oとして単離することに成功した。ついで,この錯体を含む液を出発物質として用い,つぎのような種々の系列の錯体を合成することができた。[Co(CO3)N(NH3)6-2n](n=0,1,2。太字は新化合物を表わす)。[Co(CO3)n(en)3-n](n=0,1,2)。[CG(C2O)n(NH3)6-2n](n=1,2,3)。[Co(C2O4)n(en)3-n](n=1,2)。[Co(NO2)n(NH3)6-n](n=1,2,3,4,5)。[Co(NO2)2n(en)3-n](n=1,2)。[Co(CN)n(NH3)6-n](n=1,3)(以上の一般式中錯体の荷電数は省略した)。<BR>アミノ酸とつくるトリス型コバルト(II)錯体の一般合成法として当該トリカルボナト錯体が使用できることを,グリシン,アラニンおよびロイシンについて示した。またL-アスパラギン酸との反応液にDL-アラニンを作用させることによって,35%の分割率でアラニンの部分分割ができることを認めている。また[Co(CO3)3]3-とL-アスパラギン酸との反応液からトリス(アスパラト)コバルト(III)酸錯体[Co(L-aspH)3]の4種の幾何・光学異性体を単離した。アンモニアトリ酢酸およびエチレンジアミンジ酢酸について新化合物K2[CoCO3(ata)]・H2OおよびK[CoCO3(edda)]・H2Oを得ている。<BR>pHを適当に調節したタングステン酸ナトリウムの水溶液にトリカルボナトコバルト(III)酸塩を作用させることによって新化合物K5[CoW6O22]・7H2O,K7[CoW11O38]・17H2Oを得ている。<BR>これらの合成を通し,[Co(CO3)3]3-がコバルト(III)錯体合成に関するきわめて有用な出発物質であることが結論される。この方法が従来の合成法にくらべ,より系統的かつ合理的であることも上記の諸合成から明らかである。なお得られた新化合物については,構造に関する論義も述べられている。

収録刊行物

  • 日本化學雜誌

    日本化學雜誌 87 (8), 771-784,A43, 1966

    The Chemical Society of Japan

被引用文献 (31)*注記

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