脾静脈血栓症を伴ったDouble pylorusの1例

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  • A CASE OF DOUBLE PYLORUS ASSOCIATED WITH SPLENIC VEIN THROMBOSIS

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抄録

われわれは最近,膵炎に起因すると思われる脾静脈血栓症を伴ったDouble pylorusの1手術例を経験したので報告した.<br> 症例は41歳の男性で,長年の飲酒歴を有する. 28歳頃より左季肋部から背部の疼痛をくり返し,昭和57年5月9日,下血および心窩部痛を主訴に当院内科に入院した.胃X線検査,胃内視鏡検査,選択的腹腔動脈造影など諸検査の結果,脾静脈血栓症による左側門脈圧亢進症,糖尿病,難治性胃潰瘍, Double pylorusの診断にいたり,胃潰瘍に対する内科的治療が無効のため,昭和57年9月8日開腹手術を施行した.手術所見では術前診断に加えて慢性膵炎の所見を認めた.脾剔を行い,また胃切除に際し,冠状静脈を損傷したため胃全剔を施行した.切除胃の病理組織学的検索によると, Pseudopylorusの部位では粘膜筋板の消失,筋層の断裂,円形細胞浸潤,強い浮腫と線維化がみられ,幽門前部の潰瘍が十二指腸球部に穿通してDouble pylorusが形成されたと考えられた.<br> 本症例では, 1) 膵炎, 2) 膵炎由来の脾静脈血栓症による左側門脈圧亢進症, 3) 膵炎由来と思われる糖尿病,の3者が胃潰瘍の発生,増悪,難治性に重要な影響をおよぼしたと推測され,この因果関係を中心に若干の考察を加えた.

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