紙業界の物流の現状と将来

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  • Logistics in the Japanese Paper Market.

抄録

1. 生産と消費地をつなぐもの<BR>紙は遠隔地で, 板紙は関東, 近畿, 中部で生産されているのに対して, 消費地は首都圏が対全国比65%, 近畿圏が18%, 中部圏が9%と三大都市圏に集中している。とくに首都圏は出版印刷同関連産業が集中しており, 圧倒的に大きい市場を形成している。<BR>この大消費地への輸送は板紙においてトラック便にて大部分が配送されているのに対し, 紙の方は内航海運, トラック便および鉄道輸送にてほぼ均等に分担されている。これらの輸送機関の夫々の受け皿施設は消費地の好立地点に配置されている。<BR>2. 紙類物流の役割と活発な共同行為<BR>出版印刷産業は極めて東京都心密着型産業であるが, ここに主要媒体である紙類を納入する紙業界の物流も都市密着型にならざるをえなかった。<BR>出版物が要求する多品種小ロット, 断裁加工を伴いながら短い納期に間に合わすために, 流通商社は自社車輌にて, これら受け皿倉庫間を集荷して廻っているが, 倉庫規模が大きく取り揃えが豊富にあること, その地区に倉庫が多く集合している事で, 必要品種を一度に集荷でき車輌を満杯にして出発できて, 配送効率, 輸送時間を改善できている。<BR>当業界は過去より業界あげて大規模共同倉庫の建設をおこなってきた。その結果としての在庫の集約化はいきおい配送の共同化を生み出し, 業界の配送効率を向上させている。また当時, 「紙パルプコードセンター」を設立, 業界コードの統一化をおこなってきた事が, 現在稼動している製紙会社, 流通商社, 運送会社ぐるみの受発注, 配送手配処理システムを可能ならしめているし, 使用後パレット板を回収還流させている「パレット回収機構」もその当時の成果である。このような業界に共通する基盤整備事業は今後も新しい意向を盛り込み, 継続していく必要があろう。<BR>3. 予想される問題<BR>(1) 東京都下の出版印刷産業は近年伸び悩み傾向にある。埼玉県は伸張しているが, 首都圏全体ではシェアは低下しつつある。とくに印刷業は平成3年以来出荷額は毎年減りつつあり, この中で構造改善投資を迫られている。紙二次製品および印刷物の輸入量が近年著しく伸びている事の影響も大きい。<BR>(2) 東京都心の半径10kmの円圏内に東京の出版印刷産業の85% (全国の40%弱) が集中している。また東京港湾地区に散在している紙類在庫量は都下総在庫の過半に当り, これも集中している.災害発生時には港湾地区は流砂現象と橋梁の損傷を被る危険が大きいし, 倉庫内に積載中のパレット積み配の倒壊で被る被害も大きい。災害発生時における対応の研究は今おこなっておく必要があろう。<BR>(3) 物流技術と情報処理方式が日進月歩の只中にある現在では変化に柔軟に対応できるようにしておく事が大事。あまりがんじがらめのシステムをつくっておく事は危険であろう。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 50 (10), 1371-1383, 1996

    紙パルプ技術協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282681489009280
  • NII論文ID
    130003687860
  • DOI
    10.2524/jtappij.50.1371
  • ISSN
    18811000
    0022815X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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