特集 「印刷技術年報」

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  • 5. 印刷後加工技術 5-1 製本技術

抄録

1986-1990年の5年間の製本の設備・技術等の動向を考察すると, 量の生産から質の生産体制へと変りつつあることが窺われる. 製版・印刷工程に比べるとやや遅れ気味ではあるが, (1) 設備へのコンピュータの導入 (2) 省力化・省人化のための設備導入 (3) 工場内物流改善や省力化を兼ねたFA化工場への試み (4) 落乱丁防止等品質保証機器の普及等があげられる.<br>また, 生産効率アップのための諸製本機械の高速化も進められた. 雑誌の製本機では最高回転数10,000RPH前後から15,000RPHが次のステップの目安になると思われる.<br>一方, この分野での社会的背景による最大の関心事は1989年末に顕在化した人出不足による納品遅延問題や外国人の単純作業への雇用が大きな社会問題として話題となった. そして, 人出不足は「3K (きつい, きけん, きたない)」の言葉を生み作業環境と労働条件の改善を促すきっかけとなった. 日印産連の特別テーマとして「無線綴りの騒音低減研究」 (1988年), 「製本におけるマテリアルハンドリングの研究」 (1991年) が行われたが, 製本分野の昨今のニーズをよく象徴しているように思える.<br>出版製本分野を中心に設備・技術動向について昨今の変り方と将来への展望等について述べてみたい.<br>1.1 上製本ラインマシンのプリセットシステム<br>1960年代前半に米国スマイス製上製本ラインマシン, 後半に西独コルブス社の同設備が日本へ導入された. これは, 上製本生産の省人化と大量生産への革命であった. そして高度経済成長期には各種の百科事典と美術本ブームの製本の役割を十分に発揮した. しかし, 安定期に入ると上製本は並製本特に雑誌からみると本来的には小ロット, 多品種生産タイプの典型であることから作業切替の時間短縮が生産効率向上の面でまず必要となってきた.<br>1982年6月DRUPAにて西独VBF社のプリセットシステムを搭載した上製本ラインマシンがはじめて展示された. 日本へ1台目が導入されたのは1985年であった.<br>その後, 西独ゴルブス社も同種の機械を開発, 1991年現在既に約38台が日本で稼働中である. これは, 全国で現在稼働中の上製本機約120台中の32%に相当することになる. もちろんコンピュータによるプリセットの考え方は製本分野では断裁機や糸かがりの折丁フィーディングシステムに取り入れられ定着化し, 最近では高度レベルに達しているが「造本仕上げ機」としてははじめてであり, 製本機のセッティングコンピュータ化のはじまりといえよう. これらのコンピュータには生産管理機能をもたせることも進められ, 正確な記録にもとづく生産管理を行うことを可能にした.<br>1960年代のラインマシンとコンピュータ搭載の最近のラインマシンの生産性を示すデータの一例を示すとおよそ下記のような変貌をみることが出来る.<br>表5-1-1<br>したがって, 能力として139%, 切替時問1/3への短縮が'80年代後半から可能となったといえる.<br>1.2 その他の製本機のコンピュータ化<br>上製本ラインマシンのコンピュータによるプリセット化は, 並製ラインマシンや他の機械へのプリセットにも影響を及ぼした. 本製本ラインマシンが寸法決めが可能となった背景は, 本の表紙と中身が固形に近い均一な大きさであった為といえる.<br>一方, 並製本は, 表紙も中身を構成する折丁も紙質により大きく異なり, また寸法や印刷の版種により異なり, 扱いづらい. これらの点がセットの自動化をむずかしくしている. しかしながらも全工程ではないが, 可能な部分についてコンピュータセットを取り入れた設備が発表され実用化に入っている.<br>三方断裁機は, 並製ラインにおいては最終の工程であるが, 寸法設定に時間がかかっている. IGAS'87に発表されたコンピュータ寸法決め付三方断裁機は, 天地小口寸法及び罫下落としをプリセット可能とした. これによりセッティング時間40分が20分に短縮された. また, 無線綴機の丁合機折丁ホッパーの寸法決め, 表紙フィーダー及び搬送部背の断ちシロの自動セッティング, 接着剤塗布装置のローラー高さ決め等, 従来目視による手動操作を自動化及びデジタル化する試みがIGAS'87でメーカー各社より提示され, 現在実用と改善が進められている.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204088349696
  • NII論文ID
    130004069123
  • DOI
    10.11413/nig1987.29.199
  • ISSN
    18824935
    09143319
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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