臨床 重症右心不全症例における脾機能亢進の臨床像ならびにその病態について

DOI
  • 藤岡 達雄
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所内科 武田病院循環器内科
  • 関口 守衛
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所内科
  • 高橋 早苗
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所内科
  • 広沢 弘七郎
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所内科
  • 溝口 秀昭
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所血液内科
  • 梶田 昭
    東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所第2病理

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical study on hypersplenism in cases with severe right heart failure

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抄録

重症心疾患で右心不全を呈している症例の中に脾機能充進による汎血球減少をきたし,このために出血,感染など生命予後に重大な影響を受ける例がある.そこで我々は,右房平均圧(RAm)15mmHg以上の高値を呈した重症心疾患患者69例について,その臨床像を検討するとともに,このうち14例の剖検例において,その肝,脾,骨髄の病理所見を観察し,肝のうっ血性線維化の程度と脾機能充進との関係についても検討を加えた.結果,対象例69例中13例(18.8%)に脾機能充進による汎血球減少を認め,全例右心不全の経過が長く,RAmは平均19.4±3.2mmHgと高値を呈した.4例に心臓手術後高度の出血傾向ならびに術後感染を認め,1例に心臓手術前に脾摘を行った.<BR>14例の剖検例の検討では,脾重量と血小板数との間に負の相関(r=-0.63)を認め,汎血球減少例は全例2009以上の脾腫を認めた.また肝のうっ血性線維化の程度と脾機能充進の有無との間には明らかな相関は認めず,右心不全による脾機能充進は必ずしもうっ血性肝硬変に続発して生じるとは限らないと考えられた.<BR>血球減少は出血傾向,感染の引き金となり生命予後に重大な影響を及ぼすため,重症心疾患の経過観察をする上で脾機能充進の有無に十分注意を向ける必要があり,また汎血球減少例の場合心臓手術前の脾摘も考慮する必要があると考えられる.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 20 (9), 1062-1071, 1988

    Japan Heart Foundation

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