症例 偶然に診断された先天性左室憩室症の成人例

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タイトル別名
  • An adult case of congenital left ventricular diverticulum unexpectedly diagnosed

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抄録

症例は36歳,男性.咳嗽,喀痰,右腰背部痛を主訴に当科受診. 胸部X 線写真では特記すべき所見はなかったが,肺癌の精査を希望し胸部CTを施行,左横隔膜部に3.5×2.0cmの腫瘤を認め呼吸器外科に紹介された.胸部MRIでは心尖部に心室瘤を疑わせる所見があり縦隔腫瘍も含めた精査目的で同科入院,心精査のため当科紹介受診となった.<BR>心エコーでは前壁心尖部に径約1 c m の瘤を認め,カラードップラーでは収縮期に一致して入口部より左室内腔に向かう異常血流を認めた.エルゴメーター負荷201Tl心筋SPECTでは心尖部より指状に突出する201Tl集積を認めた.確定診断のため心臓カテーテル検査を施行,左室造影では前壁心尖部より左側方へ指状の内腔突出(最大径1.3cm,全長約6cm)を認め,その特異な形態より筋性の先天性左室憩室症と診断した.冠動脈造影では器質的狭窄を認めなかった.<BR>先天性左室憩室症はまれな心奇形で,他の合併奇形により生後早期に診断されることが多く,本症例のように無症状で成人期に診断される例は極めてまれとされる.時に破裂,血栓塞栓症などの重篤な合併症が報告されているが,孤立性の本症の自然予後は不明であり,手術適応も確立されたものはない.本症例では患者の希望もあり慎重に経過観察の方針とした.日常診療のなかで成人の未診断例が存在している可能性を示唆する症例と思われ報告する.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 35 (3), 175-180, 2003

    Japan Heart Foundation

被引用文献 (1)*注記

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