症例 脳梗塞を契機に発症した,いわゆる' たこつぼ型' 左室壁運動異常の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case report of ampulla-like shape left ventricular abnormality induced by the stress of cerebral infarction

この論文をさがす

抄録

症例は81歳,女性.脳梗塞で入院中に胸痛を訴え,心電図上前胸部誘導を中心に広範囲な持続するST上昇を認めた.急性心筋梗塞を疑い心臓カテーテル検査を施行したところ,冠動脈に閉塞所見や有意な狭窄病変および血栓像は認められなかったが,アセチルコリン負荷試験で多枝冠動脈に攣縮が誘発された.左室造影所見は心尖部を中心とした収縮能の低下と心基部の過剰収縮を認め,いわゆる'たこつぼ型'を呈していた.入院時に心筋逸脱酵素の軽度の上昇と血漿カテコールアミンの上昇を認めた.入院第5病日に脳梗塞再発作をきたし約5時間後に胸痛を訴え,心電図で陰性T波の陽転化とQT延長,血漿カテコールアミンの再上昇が認められた.その後,心電図は再び前胸部誘導を中心に著明な陰性T波を示した.慢性期の左室造影所見では左室壁運動異常は正常化しており,冠動脈造影で左右冠動脈に有意な狭窄病変は認められなかったが,急性期と同様にアセチルコリン負荷で多枝冠動脈に攣縮が誘発された.本症例は冠攣縮誘発や臨床症状より冠動脈攣縮の関与も示唆されたが,脳梗塞のストレスが血中カテコールアミン動態に影響を及ぼし,特異的な'たこつぼ型'の左室壁運動異常の発症に至った可能性が強く考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 35 (7), 509-515, 2003

    Japan Heart Foundation

被引用文献 (7)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ