外国人にもわかりやすい問診票とは:問診票の理解に関する調査

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  • <i>Monshinhyo</i> That Are Also Comprehensible to Foreigners: <i>Monshinhyo</i> Comprehension Research

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抄録

目的<br> 本研究は、在住外国人が日本の医療機関を受診する際の問題の解決の一助とすべく、実際に病院で使用されている問診票のどのような点が難しく、わかりにくいのかを考察し、改善の方向性を示唆することを目的としている。<br>方法<br> 実際に関西地方のある病院で使用されていた問診票(産科、外科、内科)について 4年制大学に通う留学生と日本人大学生に対し、面接調査とアンケート調査を行った。<br>結果<br> 面接調査の結果、留学生・日本人学生双方より問診票のわかりにくさが多く指摘された。留学生からは質問内の日本語がわからないという指摘が多かった。病名などの漢字熟語がわからない場合は漢字圏・非漢字圏出身者共に個々の漢字から意味を類推していた。その方法は効果的な場合もあったが、誤解も多く見られた。日本人学生からは、日本語の問題よりも、質問形式やレイアウトがわかりにくい、質問の意図がわからないなどの指摘が多かった。これらの結果を踏まえ、アンケート調査を行った。留学生は日本人よりも漢字の読みの正答率がかなり低かったが、その言葉の意味の理解にはそれほど差がなかった。質問形式やレイアウト、質問意図のわかりにくさなどは、留学生、日本人学生に共通して指摘された。例えば、病気の具体的な症状、診療科の分かれ方、血縁者の範囲についての質問項目である。中には 1つの質問項目に複数の問題が指摘されるものもあった。これらの問題が起こる原因として、問診票内の質問の表記、表現の曖昧さ、レイアウトの不親切さ、患者の医療に関する知識のなさ、母国の医療制度や習慣との違いなどが考えられた。<br>結論<br> 問診票の問題は、患者の日本語能力や受診経験のなさなど患者側から生じるだけでなく、不明確な質問意図や表現の曖昧さなど問診票自体にも起因している。この問題は、自分たちの「常識」が患者と共有されていないことや患者に医療知識が乏しいことを医療関係者が意識していないために起こるのだろう。わかりにくい問診票は患者に推測を要求し、問診票本来の目的を阻害する可能性がある。患者の誤解や不安を少しでも減らすためにも、振り仮名を付ける、回答を選択式にする、質問項目を精査し整理する、質問の仕方を工夫するなど具体的な方策が採られることが望まれる。また、医療知識の乏しい患者との意思疎通を容易にするために、問診票の役割と意義を含め、医療関係者のことばの問題全体を再考する必要がある。

収録刊行物

  • 国際保健医療

    国際保健医療 24 (1), 31-40, 2009

    日本国際保健医療学会

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