チアミン欠乏時におけるグルコース過剰摂取がマウスの脳内神経伝達物質および行動に及ぼす影響

  • 山田 賢
    九州大学大学院農学研究院 代謝・行動制御学
  • 及川 大地
    九州大学大学院農学研究院 代謝・行動制御学
  • 友永 省三
    九州大学大学院農学研究院 高次動物生産システム学
  • 古瀬 充宏
    九州大学大学院農学研究院 代謝・行動制御学

書誌事項

タイトル別名
  • Neurochemical and behavioral effects of excessive glucose intake in thiamine-deficient mice

この論文をさがす

抄録

グルコース由来のエネルギー合成経路において、チアミン (ビタミンB1) は重要な働きを有する。チアミン欠乏は、認知機能障害などの中枢神経障害を引き起こすが、これは脳内におけるエネルギー合成障害が主要因であると推測されている。しかしながら、その詳細な作用機構は未解明なままである。本研究では、この中枢神経障害発症の作用機構の解明を試みた。マウスにチアミン欠乏飼料を給餌し、更にグルコースを腹腔内に投与した。その後、マウスの慣れ学習および短期記憶への影響を観察し、脳内のモノアミンおよびアミノ酸含量を測定した。<br> 行動試験の結果、チアミン欠乏によって慣れ学習が阻害され、過剰なグルコースの投与によって短期記憶障害が引き起こされた。しかしながら各学習阻害は、もう一方の処理による影響は受けなかった。また、チアミン欠乏は海馬内におけるL-リジン含量を変化させ、過剰なグルコースの投与は大脳皮質内のドーパミンおよびノルアドレナリン含量に影響を与えた。以上の結果から、チアミン欠乏による中枢神経系の障害は、エネルギー代謝障害のみに起因するものではなく、他のメカニズムも関与する可能性が示された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ