臨床実習におけるケースレポートの問題点とその指導

DOI

抄録

【はじめに】 本大学は付属病院を併設しており、1期生から3期生の臨床実習では、付属病院スタッフに加えて大学に所属する理学療法学科教員(助手5名)が臨床実習の指導者として学生を指導した。学生を臨床で指導する立場と臨床実習後に学生のレポートを確認する二つの経験するなかで、ケースレポートに関するいくつかの問題点があげられた。そこで、問題点をまとめ、実習指導者としてケースレポートの指導上工夫した内容を報告する。【ケースレポートにおける問題点】1)学生はいわゆる評価実習と臨床実習の目的の違いを意識していない。したがって、評価実習と臨床実習ではレポートの目的が異なることを意識せずに記載している。2)学生は、「レポートに必要」と考える情報を利用意図なく闇雲に収集する傾向があり、情報の収集およびその記載に最も力を注ぐ傾向がある。3)レポートの形式上、レポートで最も大きな割合を占める部分が初期・中間・最終評価の測定結果である。【ケースレポート作成にあたり行った具体的指導内容】1)臨床実習におけるケースレポートは、自らが評価し考えた問題点、実施した理学療法について自己評価するためにあり、自らの意志決定のプロセスが記載される必要があることを指導した。2)初期レポートで「情報の完璧性」を追求しないことを伝え指導者としてその立場に徹した。但し、初期段階で自らが考えた評価項目、問題点や治療プログラムの内容が適切であったかは、治療を行うなかで常に自己点検し、その試行錯誤の過程がレポートに記載されるように指導した。3) 学生が参考にするレポートの形式は、実習期間を「初期」「中間」「最終」の時期に分けて変化を記載しており、患者の状態を知り、治療プログラムの適応を判断するためにどの程度の時間軸で評価する必要があるか検討する意志は働き難い。そこで、学生には担当している対象者の時期、項目を含めた評価プログラムについても初期の段階で立案させ、「中間」「最終」といった評価測定のための特別な期間は設けさせなかった。 以上の指導を意識的に学生に対して行い、学生が主体的に自らを評価し、考えて行動する場面を引き出した。【まとめ】 自己評価といった臨床実習におけるケースレポートの目的から考えるならば、ケースレポートは患者の状態に関する情報だけではなく、自らの意志決定のプロセスが記載されている必要があることを指導者側は意識し、初期の段階から完璧性を追求することがないように注意する必要があると感じた。養成校ならびに指導者は、レポートの形式ではなく臨床実習の目的やレポートの目的をまず学生に指導する必要があると感じる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680541056000
  • NII論文ID
    130004577502
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.803.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ