頚椎症性脊髄症における下肢筋力とバランス機能の関係(第2報)

DOI
  • 廣瀬 昇
    東京女子医科大学リハビリテーション部
  • 安達 拓
    東京女子医科大学リハビリテーション部
  • 北目 茂
    東京女子医科大学リハビリテーション部
  • 横畠 由美子
    東京女子医科大学リハビリテーション部

抄録

【はじめに】頚椎症性脊髄症(以下頚髄症)は運動や知覚の障害が混在し、多彩な症状を呈するため、理学療法施行上で難渋することが多い。頚髄症の転倒率上昇の要因として体性感覚障害に起因するバランス機能低下と、下肢筋力低下による影響を明らかにするために、重心動揺検査および下肢筋力評価を行ったので考察を加え、報告する。<BR>【対象】本研究の目的・内容を説明し同意を得た頚髄症患者9名(男性3名、女性6名)。年齢66.8±12.6歳。JOA点数9.5±2.3点。服部分類では全症例が3型であった。<BR>【方法】直立能力評価にはアニマ社製G-7100を使用し、閉脚直立にて開・閉眼各30秒間の重心動揺検査にて外周面積、総軌跡長、動揺面積、単位面積軌跡長、総軌跡長・外周面積ロンベルク率を測定した。筋力評価には股関節屈曲、膝関節伸展・屈曲、足関節背屈・底屈時の等尺性最大下肢筋力をHOGGAN HEALTH社製MICROFET-100を用いて測定した。直立能力評価と筋力評価の関係の統計処理はピアソンの相関係数を用いた。<BR>【結果】直立能力評価では外周面積4.14cm2、総軌跡長59.77cm、動揺面積10.95 cm2、単位面積軌跡長1.91/cm、総軌跡ロンベルク率2.41、外周面積ロンベルク率4.80であった。同年代健常者平均値はそれぞれ0.48cm2、24.18 cm、1.35cm2、53.00/cm、1.45、1.39である。下肢筋力5部位の各平均値は股関節屈筋6.78kg、膝関節伸筋23.57kg、膝関節屈筋6.70kg、足関節背屈筋3.39kg、足関節底屈筋3.66kgであり、同年代健常筋力の各値を100とした場合、各筋力比率は71.5%、108.4%、61.8%、160.1%、218.7%であった。各評価の比較では股関節屈曲・膝関節伸展・屈曲と外周面積との間において、有意な相関関係が認められた。(p<0.05、r=0.66)<BR>【考察】我々の先行研究では頚髄症の転倒率上昇は体性感覚障害に起因するバランス機能低下が一因であり、膝伸展筋力とバランス機能間に相関性がないことから、運動機能を評価する上でそれぞれの評価を行う必要性を報告した。しかし、高齢者の立位姿勢制御の特性は膝・足関節筋群よりも股関節筋群に依存するという報告もあり、高齢者に多い頚髄症では膝伸展筋力単独で立位姿勢制御への影響を反映することは不十分であった。<BR> 今回、立位姿勢評価より総軌跡長の軽度延長と単位面積軌跡長の短縮から緻密な立ち直り機能低下による平衡機能障害を認め、筋力評価より股・膝関節屈筋群の筋力低下を認めた。それぞれに相関性を認めることから股・膝関節屈筋群の筋力低下も立位姿勢制御に関与していることが示唆された。<BR> 頚髄症の術後リハビリテーションにおいて、バランス機能改善を図るためには、体幹・四肢近位筋を中心とした筋力訓練、および残存されている体性感覚系からの求心性情報入力を考慮したバランス訓練の併用が必要であることが考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0769-C0769, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報

  • CRID
    1390001205562706048
  • NII論文ID
    130004578170
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0769.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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