施設入所高齢者に対する12週間の低強度運動負荷トレーニングプログラムの効果:自律神経活動・運動機能に及ぼす影響

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抄録

【目的】一般的に用いられることの多いアメリカスポーツ医学会が提唱する運動処方では、運動の効果が得られる強度として、嫌気性作業閾値レベルの負荷強度が設定されている。しかし、高齢者においては本負荷強度での運動実施が不可能な症例も少なくない。このような対象者に対しては、運動療法効果の得られるより低強度の運動療法プログラムの確立が求められる。そこで本研究では、施設入所高齢者を対象に、独自の低強度負荷を用いた運動療法プログラムを作成し、12週間継続実施した際の運動療法の効果を、自律神経活動を中心とした機能レベルおよび運動機能を中心とした活動レベルの評価項目にて検討した。<BR>【方法】対象は、介護老人保健施設入所中の高齢者18名(平均年齢75.8±4.2歳)で、運動群および非運動群(対照群)に各群9名ずつランダムに割り付けた。運動療法は、カルボーネンの式から求めた20%の負荷強度にて30分間の自転車エルゴメータを用いた低強度運動を週3回以上の頻度で、12週間継続した。運動療法効果の判定には、自律神経活動の評価として運動負荷試験時の心拍変動解析(HRV)を用い、時間変数領域および周波数領域にて分析した。運動機能の評価項目は、歩行能力の評価として10m最大歩行時間(10m MAX)、運動耐用能の評価として6分間最大歩行距離(6MD)、動的バランス能力の評価としてTimed Up & Go test(TUG)を用いた。統計学的検討には、各評価項目において、運動療法前後の比較には対応のあるt検定を用いた。また、群間の比較には対応のないt検定を用いて検討した。さらに、運動能力の評価項目においては、運動療法前の測定値を基準とした改善率を算出し、マンホイットニーのU検定を用いて2群間で比較した。いずれの方法においても有意水準は5%未満とした。<BR>【結果および考察】HRVの成績より、時間変数領域では、運動群でのみ運動療法後の運動負荷試験前および後における平均RR間隔が有意に延長し(心拍数の減少)、隣接RR間隔標準偏差が増加した(それぞれp<0.05)。また、周波数領域では、運動群でのみ運動療法後の高周波成分の有意な増加と、高周波と低周波の成分比の有意な低下が認められた(p<0.05)。これらは、自律神経活動の変化において、心拍数の増加抑制、心拍数の応答性向上、さらには、副交感神経活性の亢進と交感神経活動の興奮抑制という有効な効果が得られることがわかった。また、運動機能の評価では、10m MAX、6MD、TUG全ての項目において、両群とも有意な改善を示した(p<0.05)。しかし、改善率を両群間で比較すると、運動群が対照群と比較し有意に高い改善率を示しており(p<0.05)、この改善は、低強度負荷運動を用いた運動療法によるトレーニング効果として捉えるのが妥当であると思われる。<BR>【まとめ】本研究にて実施した低強度負荷の運動療法プログラムは、自律神経活動、運動機能へ有用な効果を与えるプログラムであることが明らかとなった。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003(0), D0403-D0403, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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