介助犬認定過程における理学療法士の役割

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抄録

【はじめに】2002年10月に施行された「身体障害者補助犬法」は、身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の訓練事業者および使用者の義務を定めるとともに、身体障害者が公共施設や公共交通機関等を利用する際、身体障害者補助犬を同伴できるようにしたものである。当センターでは2003年6月より厚生労働大臣指定法人として介助犬の認定業務を行うとともに訓練事業所として、介助犬を希望する障害者の評価と介助犬の介助動作の評価を実施している。今回、我々が経験した介助犬認定過程における理学療法士の果たす役割と、評価の実際について報告する。<BR>【認定に至る過程とPTの役割】介助犬認定の申請が出されると、介助犬利用希望者の1)社会的適性評価・環境評価、2)医学的評価、3)身体機能評価を行い、これらの結果をもとに4)訓練計画が立案され、この計画に基づいて5)候補犬を決定し、候補犬の6)訓練(基礎訓練・作業訓練・合同訓練)を行う。この訓練結果は、7)総合評価・適合評価として8)認定審査会に提出される。この過程において、PTが関わるのは3)4)6)7)ある。3)では身体機能を評価し介助項目の洗い出しと介助方法を決定する。4)ではゴール設定・訓練計画・介助犬への要求項目について整理する。6)では介助犬訓練者に禁忌事項や介助方法について助言を行う。7)では介助犬が希望者の介助を安全にかつ適切に行えているかを評価する。<BR>【身体機能評価の経験】介助犬に歩行介助(転倒しそうになったときの介助)を希望するリウマチ者の身体機能評価を経験した。希望者は屋内平地は独歩、屋外は杖歩行が可能であった。歩行介助を介助犬に託すためには、原疾患を考慮すると急激な関節への負担を避けることが必要であり、介助犬と使用者を結ぶリードを介しての歩行安定性の確保や、転倒しかけた使用者を支えることにはリスクが大きいと判断した。そこでPTはリーチ範囲の制限に起因する床からのものの拾い上げや、起居動作時の努力性の動きに対する関節への負担軽減を改めて介助犬の動作として整理し、訓練計画を立案した。<BR>【問題点と課題】介助犬希望者の評価・訓練はPTにとって未知の部分が多い。介助犬にどんなことができるのか、どんなことが任せられるのかという視点にのみ立つと、希望者のニーズを見間違うことになる。あくまでも希望者の身体機能を補うものとして、我々が日常的に行っている身体機能評価の手法を重視して、動作負担の大きな動作や介助を必要とする動作を確認し、これらの動作に対する介助方法を評価していくことがまず重要である。今後、介助犬についての理解を深めるとともに、リハ分野における介助犬の有効性をPTの視点から検証していく必要があろう。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), E0780-E0780, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565386240
  • NII論文ID
    130004578492
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.e0780.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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