徒手筋力検査法における徒手抵抗の限界に関する検討

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【目的】徒手筋力検査法(MMT)では検者が加えた徒手抵抗による判定が段階3以上では主に用いられる。しかし、我々が行った膝伸展運動モデルによる徒手固定限界の検討では、固定限界の平均値は男性で27.6kg、女性で19.0kgfであり、従来から限界とされてきた30kgに満たない検者が多数存在することが明らかになった。そこで、本研究ではMMTのbreak testを想定した設定において、検者が加えることができる徒手抵抗力を測定し、判定に及ぼす影響について検討した。<BR>【方法】参加への同意が得られた健常者28名(男性10名、女性18名)であり、平均年齢25.7歳、身長162.9cm、体重56.9kgであった。なお、対象は理学療法学科学生であり、10週間の臨床実習を経験後であった。<BR>【方法】肩外転、膝伸展、股内旋のMMTにおけるbreak testを想定して、左手の手掌にハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製μtas MF-01)を面ファスナーにより装着した状態で、それぞれ100cmの台に垂直、50cmの台に垂直、15cmの台に水平方向に抵抗を加えた。その際加える抵抗は、3秒程度で最大となり、5秒程度まで定常状態を保つように力を加え、その最大値を測定値とした。そして、測定は30秒以上の間隔をあけて2回行い、平均値を測定結果として採用した。得られた結果から、男女間の差についてMann-Whiteny検定を、全対象者における各設定の差について分散分析と多重比較を用いて検討した。<BR>【結果】測定の結果、対象者における最大抵抗の力(平均値±標準偏差)は、全対象者、男性、女性の順に高さ100cmでは13.8±6.2kgf、21.0±3.8kgf、9.8±2.4kgf、50cmでは31.9±10.4kgf、42.3±8.1kgf、26.1±6.3kgf、15cmでは12.8±4.0kgf、16.7±2.3kgf、10.6±2.8kgfであり、いずれも女性に比べ男性が有意に高値を示し、各設定では100cmおよび15cmに比べ50cmが有意に高値を示した(p<.05)。全対象者における最大値-最小値(最大値/最小値:倍)は、100cmでは30.3-6.0kgf(5.0倍)、50cmでは58.4-13.1kgf(4.5倍)、15cmでは21.0-6.6kgf(3.2倍)であった。<BR>【考察】結果より、MMTのbreak testにおいて加えることができる徒手抵抗量は、検者や測定部位の違いにより異なることが考えられた。また、検者や測定部位によっては、加えることができる抵抗の力が従来から徒手筋力測定器の固定限界と考えられていた30kgよりも小さくなる可能性が考えられた。これらは、MMTの判定に影響を与え、結果の比較や動作能力との関連づけを行うことを困難にする要因となると考えられた。よって、MMTで用いる徒手抵抗における問題を補う方法の確立が必要であると考えられた。<BR>

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