動筋収縮に先立つ拮抗筋収縮が動筋収縮に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
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- 継時誘導を利用した促通効果について
抄録
【目的】<BR>Sherrington(1947)が発表した『継時誘導(successive induction)』は,動筋収縮直前に拮抗筋収縮を伴うことでより大きな動筋出力が得られるという主旨の理論であり,後にKabatによってPNFテクニックに応用された.だが,ヒトの等速性収縮を用いた実験では十分な継時誘導の効果が得られていない.そこで本研究では,拮抗筋収縮強度を2段階に設定し,等尺性収縮における継時誘導の効果について筋電図を用いて検証した.<BR>【方法】<BR>対象は健常男性15名(21.47±3.72歳)とし,Cybex台に股関節屈曲45°,膝関節屈曲60°,足関節底背屈0°にて固定した.被験者には(1)100%最大随意収縮(以下,MVC)による背屈直後100%MVCによる底屈を行う(以下,100%pre-contraction群),(2)50%MVCによる背屈直後100%MVCによる底屈を行う(以下,50%pre-contraction群),(3)100%MVCによる底屈のみ行う(以下,non pre-contraction群)の3種類の課題を各3回合計9回行わせ,各群底屈時の腓腹筋内側頭(以下,GAS.M),外側頭(以下,GAS.L),ヒラメ筋(以下,SOL)における表面筋電図を測定した.筋電図は振幅積分筋電図を求め,底屈開始後3秒間の積分値についてnon pre-contraction群を100%とした百分率で表し群間比較した.統計処理には,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた(p<0.05).<BR>【結果】<BR>100%pre-contraction群ではGAS.Mが約6.5%,GAS.Lが約6.0%,SOLが約16.0%の割合で有意に増加した.50%pre-contraction群では,SOLで約9.1%有意に増加したが,GAS.M, GAS.Lでは有意差は認められなかった.<BR>【考察】<BR>全ての筋において100%pre-contraction群で,non pre-contraction群より有意に振幅積分筋電値が増加した.積分筋電値と主動作筋の発揮張力との間には比例関係が成り立つことから,本実験の条件下において継時誘導原理に基づく促通効果が認められたと考えられる.一方で,50%pre-contraction群とnon pre-contraction群間の比較では,SOLでのみ有意差が認められた.各筋における促通効果の差については,筋線維組成等の相違点が関与している可能性があると考えるが,これには更なる検討が必要である.だが,結果から継時誘導を応用する際,より強い拮抗筋収縮を行わせることによって大きな効果を期待することができる,ということが示唆された.継時誘導の機構については,Ib抑制あるいは脊髄前角細胞の興奮性が関与していると考えられているが,今後更なる実験を重ねて明らかにする必要性がある. <BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), A0689-A0689, 2006
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205563506432
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- NII論文ID
- 130004578767
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可