頚部自動可動域とバランス

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抄録

【目的】高齢者は視覚,前庭覚,筋組織などの機能系に退行変化を生じることにより、姿勢調節機能が低下しバランス能力も低下する.退行変化する機能の一つに頸部の関節可動域が挙げられる.今回、頚部に注目し自動可動域とバランス能力との相関を調べその影響を検討した.頚部によってコントロールされる頭部には視覚、前庭覚が存在していることから頚部の可動域に制限が生じることは、バランス能力低下につながると推測出来る.<BR><BR>【方法】対象は要支援レベルの高齢者32名とした.頚部可動域は日本整形医学会及び日本リハビリテーション学会制定の計測法に基づいて計測した.バランステストは総合的にバランス機能をテストするために、次の4種類実施した.(1)開眼単脚直立検査(2)Manual Perturbation Test(以下MPT)(3)Functional Reach Test(以下FR)(4)Time Up and Go Test(以下TUG).なお、MPTとは被検者の肩に後方から予告なしに軽い後方刺激を徒手にて加え,外乱負荷に対する反応様式を3段階に得点化したテストである.得点化に当たってはPSTの反応様式を参考とし、PSTの0~2点に相当する「刺激に対して転倒する反応」を0点、3から6点に相当する「踏み直り反応が起きて立位保持可能」を1点,7から9点に相当する「その場で立位保持」を2点とした.また、TUGの歩行距離は3mとした.分析手順は頚部の各可動方向とバランステストの結果との関係性をピアソンの相関係数及びスピアマンの順位相関係数を用いて検討した.<BR><BR>【結果】頚部自動可動域の平均値は屈曲48.4°±9.6、伸展55.7°±14.1、右側屈20°±8、左側屈24.2°±9.5、右回旋50.7°±13.5、左回旋55.7°±11であった.バランステストの平均値は開眼単脚直立検査20.7秒±21.7、FR29.6cm±6.8、TUG9.3秒±3.7であり、MPTは0点9名、1点12名、2点11名であった.頚部自動可動域とバランステストの関係性は、単脚直立検査において伸展、左右側屈可動域と正の相関が、FRにおいて屈伸,左側屈,左右回旋可動域と正の相関が、MPTにおいて屈伸,右側屈、左右回旋可動域と正の相関が、TUGにおいて左右側屈可動域と負の相関が見られた(p<0.05).また、各バランステスト間では単脚直立検査とTUG、FRとTUGの間に正の相関が見られた(p<0.05).<BR><BR>【考察】頚部の自動可動域と全てのバランステストに相関があったことから、頚部の動きがバランス能力に影響を与えることが確かめられた.頚部は頭部を支えコントロールするだけでなく、その筋には異常な程多くの筋紡錘が存在し頚の立ち直り反射として姿勢調節の一端を担っている.バランスにおける頚部の動きの重要性が改めて確認できたのではないだろうか.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2100-A3P2100, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543419648
  • NII論文ID
    130004580127
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2100.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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