足把持力トレーニングの短期効果に関する研究

DOI

抄録

【目的】転倒は多くの危険因子により発生する.転倒予防において、支持面である床と唯一の接触部である足底、とくに足趾が重要な役割をはたすことは既に多くの報告がなされている.足趾は支持機構としての働きのほか、感覚の情報入力においても重要である.足趾機能の評価指標として足把持力は多くの研究で用いられている.また、足趾に対する訓練として足趾歩行、ビー玉移動などがあるが、床上に置いたタオルを足趾でたぐりよせるタオルギャザーは、臨床で多く用いられるトレーニング方法である.そこで、本研究では、タオルギャザーによる足把持力トレーニングの効果について検討した.<BR><BR>【方法】健常成人女性19名(平均年齢20.3±0.5歳、平均身長159.6±5.5cm、平均体重52.4±7.6kg)を対象とし、6週間の足把持力トレーニングを行った.トレーニングはタオルギャザーとし、タオルの上に0.5kgから2.0kgの重りを段階的に増加させながら実施した.運動頻度は週4日で、1日あたり10回×2セットとした.トレーニング前、トレーニング3週間後、6週間後に足把持力を測定し、各測定値は反復測定ANOVA検定、およびFisherの多重比較検定を行いトレーニング効果の判定を行った.<BR><BR>【結果】足把持力値はトレーニング開始前10.1±2.6kg、トレーニング開始3週間後12.8±2.6kg、6週間後では13.0±2.6kgであった.足把持力は3週間後では有意な増加がみられ、6週間後では3週間後と比較して有意な変化はみられなかった.<BR><BR>【考察】健常成人女性を対象に足把持力トレーニングとしてタオルギャザーを実施したところ、開始3週間後には有意な増加が認められたが、3週間から6週間の間では有意な増加は認められなかった.タオルギャザーを用いた足把持力のトレーニング効果について、開始後4週間で効果がみられたとする報告や、開始後10週間で訓練の効果がみられたとする報告などがある.しかし、トレーニング種目が複数であったり、トレーニング実施が被験者の自主性にゆだねられていたり、足把持力のトレーニング効果については必ずしも明確とはいえない.本研究では、トレーニングには験者が毎回立会い、確実に実施できているかを確認しながらおこなった.筋力増強訓練の効果について、筋力訓練を開始した直後の筋力増加は神経系の促通によるもので筋肥大は伴わないと考えられている.また、筋肥大を伴う筋力増加は最低6週間程度の運動の継続が必要であるといわれていることからも、今回、開始3週間で有意に増加した足把持力は神経系の影響によるものと考えられる.タオルギャザーによる足把持力トレーニングは比較的早期に訓練効果が得られることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3021-A3P3021, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566904832
  • NII論文ID
    130004580214
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p3021.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ