極超短波による温熱負荷が筋肥大に及ぼす影響第2報

DOI
  • 矢野 昌充
    専門学校金沢リハビリテーションアカデミー

抄録

【目的】<BR>筋力が増大する要因として、運動単位の動員の増加や筋断面積の拡大が考えられている.<BR>後藤らによると,筋細胞の肥大は、筋細胞内におけるタンパク質の合成増加およびサテライトセルの融合によると述べており、筋細胞数の増加に関しては、負荷増大により個々の筋細胞が肥大すると同時に小さな中心核を持った新たな筋細胞の形成をもたらすとされている.<BR>また、温熱負荷による筋肥大の機序について、温熱負荷によりタンパク質の合成が分解に対して相対的に賦活化されることで、温熱負荷のみで筋肥大が引き起こすと述べている.<BR>我々は、第24回東海北陸理学療法学術大会において報告した、8回1セットという低い運動強度での同様の実験では、温熱負荷の影響を見出せなかった.そこで本実験では、極超短波を用い肘関節屈筋群に温熱負荷を加えた後に運動負荷を上げて筋力強化を行い、筋厚の変化を検証し,温熱負荷と筋肥大の関係を明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】<BR>被験者は実験の主旨を説明し同意を得た、神経学的・整形外科的疾患のない健常男性19名、彼らを無作為に温熱群9名(年齢21.0±1.1歳)、非温熱群10名(年齢21.2±0.4歳<BR>)とした.温熱群には極超短波装置インバータパルスマイクロージョ MJI-800W(SAKAI社製)を使用し、照射距離は被検筋の膨隆部直上から垂直に10cmの位置にし、振動周波数は2450MHz、照射時間は10分間とし、肘関節屈筋群の最大膨隆部に温熱負荷を加えた.また、両群ともに筋力強化は、鉄アレイを用い、運動強度70%1RM、反復回数は10回を3セット、頻度は週に3回、実験期間は6週間とした.筋厚の測定は、超音波診断装置(日立メディコ、ECHOPAL2)を用い、実験前後の肘関節屈筋群の最大膨留部を測定し比較・検討した.各群における実験前後の筋厚と両群の筋厚の変化度の比較は、各々、対応のあるt検定と対応のないt検定を用いた.有意水準は5%とした.<BR>【結果】<BR>温熱群において、実験前29.6±4.4、実験後31.8±5.5であり有意差を認めた.非温熱群の実験前後および両群の筋厚の変化度比較においては有意差を認めなかった.<BR>【考察】<BR>本実験では、温熱群では実験前後に有意な筋厚の増大が認められ、非温熱群では認められなかった.このことから温熱負荷によって筋肥大が生じる一定の効果があることが示唆された.しかし、両群の筋厚の変化度の比較では有意差は認められなかった.本実験では、被験者数が少なく、被験者間の効果に差違があったことが推察される.また、後藤や小島は,低温かつ長時間の温熱負荷は筋肥大を引き起こし、筋力増強をもたらす刺激になり得ると報告している.本実験の極超短波による10分間の急速な温熱負荷方法では,筋タンパク質の合成の賦活化は不十分であったことも伺われ、今後さらに、筋力増強につながるような筋肥大には温熱負荷方法と筋力強化方法を、さらに検討していく必要があると考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3143-A3P3143, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566750336
  • NII論文ID
    130004580331
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p3143.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ