慢性期脳卒中片麻痺患者に対する体重免荷トレッドミル歩行練習の即時効果

DOI
  • 高尾 敏文
    筑波記念病院リハビリテーション部 筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 田中 直樹
    筑波記念病院リハビリテーション部 筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 飯塚 陽
    筑波記念病院リハビリテーション部 筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 斉藤 秀之
    筑波記念病院リハビリテーション部
  • 山口 普己
    筑波記念病院リハビリテーション部 筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 柳 久子
    筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 奥野 純子
    筑波大学大学院人間総合科学研究科福祉医療学
  • 小関 迪
    筑波記念病院総合リハビリテーションセンター

Abstract

【目的】<BR> 脳卒中片麻痺患者に対して,体重免荷装置とトレッドミルを組み合わせた歩行練習(Body Weight Support Treadmill Training: BWSTT)が注目されている.脊髄損傷患者や脳卒中患者を中心に,この練習方法の有効性や運動(歩行)に与える影響などについては数多くの報告がされている.我々も第42回日本理学療法学術大会において,慢性期脳卒中患者への4週間(計12回)のBWSTT実施により歩行速度が改善したことを報告した.有効性についての報告の多くは長期的な変化をみているものであり,短期的・即時的な変化を観察したものはむしろ皆無である.実施した練習の即時効果が明確であることは,患者が練習を継続するうえで重要な要素であると考える.以上のことを踏まえ,本研究の目的は慢性期脳卒中片麻痺患者に対するBWSTTの即時効果を検証することである.なお,本研究は筑波記念病院倫理委員会の承認を得て実施した.<BR>【方法】<BR> 監視以上の歩行能力を有し,本研究に同意を得られた慢性期脳卒中片麻痺患者9名(平均年齢60.7±10.0歳,男性7名)を対象とした.片麻痺の原因疾患は脳出血5名,脳梗塞4名,麻痺側は右8名,左1名であった.発症からの期間は52.4±37.4ヶ月(範囲15-119ヶ月)であった.<BR> BWSTTの設定は,免荷量は体重の20%,歩行速度はトレッドミル上で介助無しで歩くことのできる範囲において最も速い速度,練習時間は20分とした.BWSTT実施前後で血圧,心拍数,歩行速度(快適,最大),歩行率,重心動揺(1分間の両足圧中心移動距離の総軌跡長及び外周を囲む矩形面積)を測定した.統計学的検討は,歩行及びバランスに関する指標について,Wilcoxonの符号付順位検定を行った.有意水準は5%とした.<BR>【結果】<BR>BWSTT実施前後において,血圧は,収縮期血圧が121.9±17.1mmHgから124.8±23.8mmHg,拡張期血圧が77.1±23.0mmHgから80.0±8.0mmHg,心拍数は74.9±10.5bpmから84.9±8.9bpmに変動した.歩行およびバランスに関する指標は,快適歩行速度0.6±0.3m/secから0.6±0.2m/sec,最大歩行速度0.8±0.3m/secから0.8±0.3m/sec,ケイデンスは102.4±23.8steps/minから100.1±26.9steps/min,重心動揺は総軌跡長が133.4±51.1cmから125±52cm,矩形面積が12.6±5.7cm2から14.7±7.1cm2に変動したが,いずれも有意な差は認めなかった. <BR>【考察】<BR>心拍数・血圧の変動から,今回のプロトコルでは運動負荷量が適正範囲内にとどまり,安全に歩行練習が実施できることが示された.慢性期の脳卒中片麻痺患者において歩行及びバランス能力の即時的な改善は得にくいことが示唆された.長期的にはこれらの改善が多く報告されており,我々も同様の効果を確認していることから,BVWSTTの介入効果を得るためには一定の期間が必要であると考える.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566175360
  • NII Article ID
    130004580596
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p3325.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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